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デュエル・マスターズについて語る非公式ファンサイトです。
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デュエル・マスターズ初心者向けを意識した記事を書いています。
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『ジャッジの目』


「お前、ルール違反すんなよ!」
ショッピングセンターの客数が一番増える日曜日。
様々なイベントのために使われる多目的スペースの一角で子供が叫ぶ声がした。
今日は月に一度あるデュエマの公式大会の日だ。
人々の目は自然とそのテーブルに向く。対戦を終えたプレイヤーはそのテーブルに近づく。
「そんな事してないよ。ちゃんとやってるよ……」
怒鳴られた子供は消え入りそうな声で言い返す。
その態度が気に入らなかったのか、言い返された事が気に食わなかったのか、目を釣り上げて対戦相手の子供は立ち上がって叫ぶ。
「ルール違反だ!卑怯者!」
怒鳴り声と共にテーブルを叩く。怒鳴られた子供は既に泣きそうになっていた。
多くの人がテーブルの周りにいる。だが、誰も口を挟めずにいた。
「ルールを破る奴なんか最低だ!お前の反則負けだぞ!」
「そこまでだよ」
柔和な声がその場に響いた。
そこに現れた男は、怒鳴りながらテーブルを叩いて威嚇を続ける少年の手を包むように押さえる。
怒鳴っていた少年が顔を上げると、そこには黒いシャツを着た男がいた。
その男は笑っていた。
人懐っこい笑顔を浮かべる若い男で、怒鳴っていた少年は彼の顔を見た瞬間、毒気を抜かれたように黙ってしまった。
「あ、審判の人……?」
怒鳴られていた少年は男の黒いシャツを見てその男の役目を思い出す。
黒いシャツはジャッジの証しだ。
上級者以上にルールに精通している者達で、大会では最高の権限を持つ。
ジャッジの判断は絶対だ。誰も逆らう事はできない。
柔和な顔のジャッジ、竹中は怒鳴られていた少年を見る。
怒鳴られていた少年は彼に見られた時、自分が反則をしたと言われるのを恐れて表情が強張った。
しかし、竹中の左目を見ている内にそんな気持ちは消えて行く。
彼に任せておけば安心だと感じるようになっていった。
「どうしたんだい?何かあったのかな?」
「僕、ちゃんとプレイをいていたんだ。だけど、この子が……」
怒鳴られていた子供は心配そうな顔で怒鳴っていた子供を見た。
ジャッジの仲裁によって怒鳴るのをやめた彼だが、腕を組んで不満そうにしている。自分は間違っていない。悪いのは相手だと言わんばかりの態度だ。
「君が何かしたら、この子が怒ったんだね。何をしたの?」
「《青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)》を召喚してマナを増やしたんだ。この子のシールドに《ローズ・キャッスル》がついているから《青銅の鎧》を墓地に置いたら、突然怒りだしたんだ」
「だって、そうだろ!《ローズ・キャッスル》で《青銅の鎧》が破壊されるから効果が使える訳ないだろ!」
竹中には騒動の原因が判った。どちらがルールを勘違いしているのかも判った。
竹中は、今度は怒鳴っていた子供に顔を向ける。竹中の左目で見られて、怒鳴っていた子供は怒るのをやめた。
「《ローズ・キャッスル》があれば、相手のクリーチャーのパワーはマイナス1000になる。パワーが0のクリーチャーは破壊される。パワー1000の《青銅の鎧》は召喚と同時に破壊される。だから、君は出た時の能力も使えないと思ったんだね?」
「うん」
「確かに《青銅の鎧》は破壊されるんだ。でも、クリーチャーが出た時の能力は使えるんだよ」
「えっ!そうなの!?」
結局は怒鳴っていた子供の勘違いだった。ルールの間違いを指摘された彼はふてくされたような態度で着席する。その肩を竹中が優しく叩いた。
「まだ終わってないよ。君は相手にひどい事をしてしまったんだ。そういう時は何て言うのかな?」
怒鳴っていた少年は竹中と対戦相手の顔を見た。しばらく黙っていたが、小さな声でこう言った。
「ごめんなさい」
「よくできました」
竹中はそう言って怒鳴っていた少年の頭を撫でた。その後、怒鳴られていた少年を見る。
「もう大丈夫だね。デュエマを再開するよ」
「はい!」
怒鳴られていた少年は、もう泣きそうな顔をしていなかった。すっきりした顔で対戦を再開する。集まっていたギャラリーもこの結末を見て安心して去っていった。
竹中も同じように去っていく。彼が静かに舌打ちをしたことには、誰も気がつかなかった。

デュエル・マスターズ、通称デュエマ。
これが人々に受け入れられてから長い月日が経った。
いつしかデュエマは代表的な娯楽の一つとなり、多くのプレイヤーが生まれた。
休日に人が集まるような場所に出かければ、誰でもデュエマ大会を必ず見るようになった。公式大会も非公式大会も増え続けていた。
しかし、爆発的な流行と大会の急増に伴い、一つの問題が発生していた。それはジャッジが不足している事だ。
今までは大会を任されていた店の従業員がジャッジをしていたが、ルール解釈ミスが多発していた。小さな大会ではジャッジが信用を失い、参加者が細かいルールを覚えて自衛をするようになった。
それによってこの問題は解決したように見えたが、今度は新たな問題が浮上してくる。ルールに詳しい者が嘘をつき、自分に有利な戦いができるように対戦相手をだまし始めたのだ。
事態を重く見たデュエマ事務局はようやく重い腰をあげ、行動を開始した。ルールを極めたジャッジを大量に育成し、様々なデュエルロードに送り込んだ。ある者は大会を企画した店に呼ばれて、またある者は抜き打ちで大会に飛び込んで、ルールの徹底に努めた。
これはジャッジとして働く男の物語である。

ジャッジの証しである黒いシャツを着たその男は店の裏にある休憩室でコーヒーを飲んでいた。これから大会に参加する多くのプレイヤーから発せられる緊張がコーヒーの中に溶け込んでいくように思えた。そんな緊張感と一緒に飲み干すコーヒーを、竹中は好んでいた。
「皆さん、今日はよろしくお願いします」
竹中達、ジャッジの目の前にいるのは、ショッピングセンターの管理人の一人だ。ここのイベント用ホールでデュエマの大会が行われる。
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。参加者の皆さんに楽しんでもらえるように、お互いがんばりましょう」
数人のジャッジを代表して竹中が言った。
小規模の大会なら複数のジャッジが来ることはないが、百人近い参加者が集まるような場合は数人のジャッジが派遣される。その場合、一人がリーダーとなり、他のメンバーが全体の見回りをする。リーダーは他のメンバーを指揮して問題が起こる前に対処するように心がける。今回のリーダーは竹中だ。
いくつか挨拶を交わした後、管理人は休憩室から出て行った。
「緊張しますね」
竹中と一緒に事務局からやって来たジャッジの一人が言う。彼は新人の中森だ。研修を終えたばかりで、大会でジャッジをするのは今日が初めてとなる。
「そんなに緊張しないで。ジャッジが緊張しているとプレイヤーが不安になるからね。僕達の仕事はルールの正否を見定める事。だから、どっしり構えないと」
「は、はい!そうですね!」
中森はまだ緊張しているらしく、強張った表情を崩して必死に笑顔を作ろうとしている。竹中は近くにいる別のジャッジに「何かあったらフォローは僕がするから」と言った。
しばらくして休憩時間が終わり、大会開始の時間となった。
ジャッジが入ると、少ししてプレイヤーが入ってくる。全員が着席した直後、竹中が細かいルールの説明をする。慣れている者も慣れていない者もその説明を注意して聞いていた。
説明が終わり、竹中が進行役の人物にマイクを渡すと大会が始まる。竹中は近くにいた中森に
「あのテーブルに注意しておいてね」
と、一言だけ言って所定の位置まで移動した。間もなく、最初の対戦が始まった。

中森に忠告した竹中の読みは当たっていた。
対戦開始の合図から数分が過ぎ、いくつかのテーブルで対戦が終わった時に事件は怒った。
「手札のカードだろ、それ!トリガーじゃねぇ!入れ替えて使うな!」
その声は中森に注視するように命じていたから聞こえた。近くの別のテーブルでルールに関する質問に答えていた中森と、全体を見ていた竹中がそこに向かった。
一つのテーブルには六人のプレイヤーが座っていて、三つの対戦が行われている。真ん中の席に座っている口がせわしなくくちゃくちゃと音を立てている少年が相手の少年を睨んでいた。相手の少年はどうしていいか判らずに一枚のカードの上に指を置いたまま、固まっていた。
竹中は彼らではなく、盤面を見た。
口をくちゃくちゃさせて相手を睨んでいるブルドッグを連想させる少年の名は東尾と言う。竹中は大会参加者のリストを見て名前を思い出していた。その時に流行っているデッキを使っているが、実力が足りないのか予選突破はできるが上位に食い込んだことはない。対戦時の態度が悪いため、過去に注意された事がある。
対戦相手の少年は佐伯だ。規模の大きい大会は初めての参加らしい。少なくとも竹中はまだ見かけた事がない。
東尾のバトルゾーンには《進化の化身(エボリューション・トーテム)》、《超電磁コスモ・セブΛ(ラムダ)》、《勝利のガイアール・カイザー》が置かれていた。《コスモ・セブΛ》だけはタップされている。墓地には《超次元ボルシャック・ホール》や《DNA・スパーク》がある。シールドは一枚だ。
佐伯のバトルゾーンにはたくさんのクリーチャーが並んでいる。《青銅の鎧(ブロンズ・アーム・トライブ)》が二体、《鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス》《魔龍バベルギヌス》、《サイバー・G(ジー)・ホーガン》、そして《霊騎コルテオ》だ。《コルテオ》以外は全てタップされている。
この事から竹中は、場の流れを推測した。前のターンに佐伯のクリーチャーが一斉攻撃を仕掛けたが、《DNA・スパーク》によって攻撃を阻まれる。東尾は自分のターンに《ボルシャック・ホール》で《勝利のガイアール・カイザー》を呼び出し、一斉攻撃を仕掛けるつもりでいた。しかし、《コスモ・セブΛ》でブレイクしたシールドが《コルテオ》だった。それを手札から出したものだと言っている。
「シールドをブレイクしたら、こいつはブレイクしたシールドを手札に加えて別のカードを手札から出したんだ!」
東尾が二人のジャッジにアピールするように叫ぶ。その口から、かすかに甘い匂いがした。
「なんだって!それはルール違反じゃないか!」
緊張した中森が硬い声で言いながら佐伯を見た。二人に追い詰められた彼は青白くなって震えている。
「君はズルをしたんだね!?」
中森が問い詰め、東尾が睨みつける。
もう対戦が終わっていないのは東尾と佐伯のところだけだった。対戦を終えた者達の目がこの席に集まる。
それに気付いた竹中は、中森の方を叩く。新人はベテランを見た。
「中森君、御苦労だったね。今から現場でどうすればいいか見せてあげるよ」
竹中はそう言って中森を下がらせ、テーブルの横に立つ。彼はテーブルにいる六人を見た。
「この中で《コルテオ》を召喚した彼、佐伯君がズルをしたのを見た人はいますか?」
東尾と佐伯以外の四人は困惑したように首を横に振った。
「なんだよ!誰も見てないからズルしてないっていうのか!」
中森に代わって場を支配した竹中が気に入らないのか、東尾が食ってかかる。竹中はそんな彼に微笑みかけると、じっと見つめた。竹中の左目を見た瞬間、東尾は怒鳴るのをやめた。
「おいしそうな匂いがするね。何を食べていたの?」
「チョコだよ」
ふてくされたように言う東尾の口の端には、茶色いものがついていた。対戦中の飲食は禁じられているが、竹中はそれを咎めずに佐伯を見た。竹中の左目を見て、佐伯の震えが止まった。
「ブレイクされたシールドを手札まで持っていったんだね?」
「ごめんなさい。でも、手札と入れ替えてはいないんです」
それを聞いた東尾が怒鳴ろうとするが、それよりも先に竹中が動く。
「ちょっと、この《コルテオ》を見せてもらうよ」
佐伯の了承を得る前に竹中がそれを手に取り、じっと見つめた。表も裏も右目でよく見ている。
「これは佐伯君から見て、右から二番目のシールドだね」
「どうして、そんなこと知ってんだ!」
東尾には答えずに竹中は観察を続ける。
「ああ、やっぱり、これは元々シールドゾーンにあったカードだ」
竹中はそう言って《コルテオ》の裏面をギャラリーに見せた後、東尾にも見せる。カードの端に茶色いものがついていた。
「チョコレートだよ。指先についていたみたいだね。シールドを選ぶ時にそれがついたんだ。そして……」
竹中は佐伯の手札を取る。それらを裏向きにしたまま東尾に見せた。
「手札のカードには、チョコなんかついてないよ。どうして、手札とシールドを入れ替えたなんて思ったんだろうね?」
竹中は柔和な笑みを浮かべて東尾を見た。そして、間髪入れずに東尾の墓地のカードを一枚手に取る。
「何すんだ!」
怒鳴る東尾の声は竹中の耳に入っていない。妙な形に反った《DNA・スパーク》を右目で見ていた。
「曲がっているね。どこにしまっていたら、こうなるのかな?」
竹中に見られた東尾は右腕の袖をつかんだ。
「おやおや。僕は右腕の袖に入れていたなんて一言も言ってないよ」
竹中は仏のように穏やかな笑みを浮かべている。普通の人間なら落ち着き、彼の顔と同じように穏やかな気分になるその顔を見て東尾は怯えて震えた。彼の袖から一枚のカードが落ちる。
「あれれ?こんなところにカードを入れていたら駄目じゃないか。デッキの中のカードと混ざってしまうよ」
その場にいる全員が疑いの眼差しを東尾に向ける。彼は急いで自分のデッキを片づけると、周りの人間を突き飛ばすようにして出ていった。
「中森君、後は任せた!」
そう言って、竹中は彼を追った。

東尾を追ってショッピングセンターの裏側まで来た時、竹中は後頭部に強い衝撃を受けて倒れた。そこには、鬼のような目つきをした東尾が鉄の棒を持って立っていた。
「あんな大勢の前で恥をかかせやがって!これじゃ、もう大会に出られないじゃねぇか!」
「君が恥なんて言葉を知っていたとは驚きだよ」
倒れていたはずの竹中は、何事もなかったように立ち上がって東尾を見た。彼の顔は笑顔だった。後頭部を強く殴られたにも関わらず、その犯人を優しい笑顔で見ていた。それを見た東尾は恐怖を感じて鉄の棒を落とし、後ずさる。だが、そこには壁があって逃げることはできない。
「恥知らずだから、大勢の前でズルをしたんじゃないか。シールドのカードを手札に加え、袖の中に仕込んでおいたカードを代わりに出す。古典的で単純な手口だ。よく見たら、君のデッキは墓地の《DNA・スパーク》を含めて四十一枚あったよ」
「数えてたのか!」
「ジャッジだからね。君の近くに行った時から数えていた」
「黙れ!」
「黙るのは君だ」
笑顔の竹中の口から、地獄の底から響くような恐ろしい声が聞こえた。それを聞いた東尾の顔が青ざめる。
「君はもう大会には出られない。それはズルをしたからじゃなくて、もうこの世界から消えてしまうからなんだ」
「な、何を言って……」
竹中の言葉を笑い飛ばそうとした時、東尾は彼の左目を見てしまった。その瞬間、彼は話すことができなくなった。
「僕の左目を見たね?この目は相手の感情をコントロールする力がある。怒らせたり、落ち着かせたり、色々な使い方ができる。君の中にある恐怖を増幅させて口を利けなくすることもできる」
次に彼は右目を見せる。
「この右目はカードの過去の位置を知ることができる。《コルテオ》がシールドのどの位置にあったのか、君がどこにカードを仕込んでいたのか判ったのも、この目のお陰だ。そして……」
竹中の額に一本の線が浮かぶ。その線は少しずつ太くなっていくように見えた。それが線でないと判った時、東尾はこの男に復讐をしようとしたことを後悔していた。目の前の男の額にあったのは、第三の目だ。
「この目は人の魂を吸い取ることができる。僕は偏食家でね。君みたいなずるくて汚い子の魂が大好きなんだ。イカサマをしても謝らない。そんな汚れた魂が欲しいんだ」
「あ……、あんた、誰なんだよ!」
「ジャッジだよ」
笑顔で答えた竹中は額の目を東尾に見せる。それと目が合った瞬間、東尾は糸が切れた操り人形のようにその場に倒れた。竹中は舌舐めずりをすると、東尾だったものを一瞥する。
「ごちそうさま。おいしかったよ。これだから、ジャッジはやめられない」
残りの試合のジャッジをするために、竹中は戻る。彼の影からは、黒い翼が生えていた。

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