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デュエル・マスターズについて語る非公式ファンサイトです。
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デュエル・マスターズ初心者向けを意識した記事を書いています。
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『解体人形の恩返し』


その夜。部屋の中でFは自分のデッキに一枚入っている《解体人形ジェニー》を見ていた。
Fはいいところでこのカードを引く。ある時は《フェアリー・ライフ》でマナを増やした次のターンに―つまり、3ターン目だ―に引いて相手の出鼻をくじく。またある時には、終盤まで握っていた相手の切り札やシノビを捨てて、相手の逆転を潰した事もあった。
Fと《ジェニー》の出会いは数日前だ。手札破壊のためのカードが欲しいと思ってパックを買ったが、そのパックには手札破壊のカードは入っていなかった。しかし、《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》が入っていたので、Fは気を取り直してそれを使ったデッキを考えようとした。
「おい、F。いいカード当たったじゃないか」
後ろから猫なで声で話しかけながら肩を叩いてくる男がいた。中学時代からの先輩、Hだった。今は大学生なのだが、大学での友達と行動しているところをHは見た事がない。今でも、H達に絡んでくる事が多かった。HはFの手から《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》を奪うようにして取ると
「欲しいカード当たらなかったのか?残念だったよな。じゃ、俺がトレードしてやるよ。いらないからコレ使え」
と言って一枚のカードを握らせた。それが《ジェニー》だったのだ。Hはデュエル・マスターズの遊び方や戦略を教えてくれた先輩であり大柄で力も強いので、小柄なFでは逆らう事ができない。Fは何も言い返す事ができなかった。そんな事もあり、Fと《ジェニー》の出会いはあまりいいものとは言えなかった。だが、せっかく入手できた手札破壊のカードであり、Hに「いらない」と言われた《ジェニー》を不憫に思ったのでデッキに入れて使ってみる事にした。
Fの目から見たHは、カードや他人を大切にしない人間だ。より正確に言うならば、自分に利益をもたらさないと判断したものを大切にしない。パックを開けてコモンやアンコモンのカードであり、使わないカードや余っているカードがあったらゴミ箱に捨ててしまう。レアカードであれば売って金に換える事もできるが、コモンやアンコモンではそれができないからだ。同じように、自分にカードを譲ってくれない人間には冷たい。Fも彼がねだってくるのを拒んだ事があるのだが、その時は人気のないところに連れて行かれ「お前がデュエマ始める時に協力してやっただろ!」と、怒鳴られた。怖かったのでHには逆らわないか、彼が近くにいる時にカードを買わないようにしている。今回は運が悪かった。
「運が悪いって言ったら……」
《ジェニー》のカードを机の上に置いたFはパソコンを立ち上げ、ブログを書き始めた。日常であった事について書く、どこにでもあるような他愛のないブログだ。
「今日、黄色い車に轢かれかけた、っと……」
運が悪いで片付けたくはないが、運が悪いで片付けるしかない。Fは帰宅中に乱暴な運転の車に轢かれかけたのだ。停止線を無視して走っていた車で、Fが避けなければ事故は免れなかった。思い出すだけで気分が悪くなる。
ブログを書いたら、やる事はほとんど終わった。明日の準備を終えてFは寝床に入った。
「それじゃ、おやすみ」
最後に、勝利の女神である《ジェニー》に挨拶をするのも忘れない。

翌朝、Fはくだらない事ばかり電波に乗せて流し続けるニュースを見ながら食事をしていた。重大な事として叫ばれている事も自分にとってはどうでもいい事にしか思えない。テレビのニュースは食事を終えたFが身支度を済ませて家を出る時まで続いていた。親が見ているのだ。
「行ってきます」
そう言ってFは家を出る。その直後、テレビで交通事故のニュースが流れた。スピードを無視して走っていた車が電柱にぶつかって運転手が死亡したというどうでもいいニュースだ。それが黄色い車だったという事を除けば。

放課後にFは友人のGとカードショップに向かった。
「今日はH先輩がいないといいな」
Fはそう呟く。すると、Gも同意した。
「そうだな。来ないで欲しいよな」
カードショップに行くと、Hはいなかった。FとGの二人はほっとしてデュエルスペースに向かう。
「そういや、Fの《ジェニー》って何か迫力が違うよな」
「え?どういう事?」
対戦をしていると、Gが妙な事を言いだした。
「何と言うか、普通の《ジェニー》よりも強そうに見えるっていうか、リアルに見えるっていうか……どうもイラストが違うような気がするんだよな」
「そうかなぁ?」
何度か対戦していると、デュエルスペースに来る人も増えた。そして、大会でもよく会う一人のプレイヤーがFの前にやってきた。
「対戦してくれない?」
彼は強豪プレイヤーでFとの実力の差は歴然としている。相手の強さを盗もうと思い、Fは対戦を決めた。
大会で何度か優勝経験があるだけあって、相手プレイヤーは強く、カードの動かし方も手慣れたものだった。まるで、手品のように素早く動かされるカードを目で追うのが精一杯だった。
「どうだ?参考になったか?」
対戦が終わると、Gが声をかけてきた。今まで別の相手と戦っていたようだが、いつの間にかFの近くに来ていたらしい。
「判らないな」
それが正直な感想だった。強くなるためにはもっと基本的な事を知っていないといけない。そう実感しただけだった。

家に帰ってカードが入っているファイルを見た時、Fは驚いた。ファイルの中からスーパーレアカードが一枚なくなっていたのだ。そう言えば、今日対戦した強豪プレイヤーは人のカードを盗んでいるとGから聞いた事がある。どのタイミングで盗んだのかは判らないが、彼がFに対戦を申し込んだという事は、最初からカードを盗むチャンスを狙っていたからだ。そうでなければ、Fのように弱いプレイヤーを相手にするはずがない。
怒りに震えたFは、デッキのカードが無事か確認するためにデッキケースを開けた。ケースから取り出したデッキを見た時、Fは小さな声で叫んだ。《ジェニー》のカッターに血が付いていたのだ。
怒りが恐怖によって消されたFは、こんな《ジェニー》のイラストがあったのかと思い、パソコンでカードの画像について調べた。だが、どれだけ調べてもカッターに血がついた《ジェニー》の画像は見つからなかった。
見間違いかと思ってもう一度《ジェニー》のイラストを見たが、やはりカッターに血がついている。それだけでなく、よく見ると金色の腕時計が《ジェニー》の足元に転がっていた。あの腕時計には見覚えがある。Hが自慢していた高級品だ。Hの左腕で輝いていたその時計も、カードのイラストの中では血で汚れ見る影もなくなっていた。
「何で、先輩の時計が……ひっ!」
Fはカードを落としてしまった。《ジェニー》のフレーバーテキストが「嫌な奴だったでしょう?でも、もういないから心配しないで」と、なっている。まるで、Fに語りかけているようだった。カードが意思を持っているなんてありえない。
怯えたFは、《ジェニー》のカードをどうやって手放すか考え、その夜を過ごした。

《ジェニー》を捨てる方法を考えている内に夜は更け、朝が来た。結局、一睡もできなかったFはスリーブの上から《ジェニー》をガムテープでぐるぐる巻きにして捨てる事にした。そのまま捨てたら、カードから《ジェニー》が飛び出してくるかもしれないからだ。馬鹿げた考えだとは思うが、今は《ジェニー》が怖くて仕方がなかった。
学校へ行く時間が近づき、Fは予定通りスリーブの上から《ジェニー》をガムテープでぐるぐる巻きにした。そして、通学路の途中にあるコンビニのゴミ箱に投げ捨てて急いでその場を去った。
これでいいはずだ。恐怖の対象を除去して、Fはほっとしていた。学校に着く頃には、朝日が自分に語りかけているように感じた。もう、自分を怖がらせる者はいない、と。
教室に入ると、いつも自分より早く来ているはずのGの姿が見えない事に気がついた。近くにいる友人にそれを聞くと、彼は気まずそうに目を逸らし、口をつぐんだ。何故、そうするのか判らずにFが黙っていると、彼は重い口を開いた。
「Gの奴、誰かに刃物で斬られて死んだって……」
それを聞いたFの背筋に電撃が走った。《ジェニー》がやったのだ。本能的にそう感じたFは、すぐに教室を飛び出していた。
Gが殺される理由は判らない。もしかしたら、Fの知り合いを全員殺すつもりなのかもしれない。最終的にFを殺すのかもしれない。
「死にたくない。死にたく、ないよっ!」
急いで家に戻ったFはドアノブを握る。この時間には家に誰もいないはずなのに、鍵がかかっていなかった。
家の中に、既に《ジェニー》がいる。そう感じたFは急いで自分の部屋へ向かう。自分の部屋には鍵がついている。安全だ。
急いで自分の部屋に向かったFはドアノブを握る。鍵はきちんとかかっていた。安堵したFは自分の部屋に入り、鍵をかけた。そして、ドアに背中を預けるようにしてその場に座る。
しばらくして、Fは自分がおかしくなったのではないかと考えた。鍵がかかっていなかったのは、家族がかけ忘れただけなのかもしれない。現に、自分の部屋の鍵はかかっていたのだ。それに、カードが人を殺すなんてありえない。馬鹿げているとしか思えない。
そう思ったFは、瞼が重くなるのを感じた。恐怖で張りつめていた糸が緩くなったせいだ。睡魔に勝てず、Fはその場で眠ってしまった。

何者かの足音を聞いて、Fは目を覚ます。聞いた事のない足音だ。人間ではなく、小さな生物の足音のようだ。Fが立ち上がろうとすると、上から一枚のカードが落ちてきた。それは、Fが捨てたはずの《解体人形ジェニー》のカードだった。奇妙な事にそのカードのイラストは背景が書かれているだけでクリーチャーの姿はそこにはなかった。
Fがそれを拾い上げると、フレーバーテキストが変化していく。
「あなたのお友達はあなたのカードを盗んだの。悪い奴よ」
昨日、対戦中にカードを盗んだのは対戦後に声をかけてきたGだったのだ。GはFの友人なのだから、Fのファイルを見ていても不思議だとは思われない。
「あなたは気付かなかったかもしれないけれど、あなたを轢きかけた奴もあたしが殺してあげたの」
Fは黄色い車を思い出した。あの運転手も《ジェニー》の手で殺されたのだ。
「あなたがあたしを大事にしてくれたから、恩返ししてあげたの。Hが取ったカードは売られた後だったから取り返せなかったけれど、Gが盗んだカードは取り返してきてあげたわよ。ちょっと、血がついちゃったけれど」
フレーバーテキストが消え、また新しいフレーバーテキストが浮かび上がる。逃げる事も忘れて、Fはそれを読んでいた。
「デュエルでも勝てるように手伝ってあげたのに、あなたはあたしを捨てた。恩返ししたあたしを捨てた。だから――」
また、フレーバーテキストが消えた。次のフレーバーテキストが浮かび上がる前にFはカードを落とした。そんな彼の目に最後のフレーバーテキストが映った。
「殺すの」
その場から逃げるためにFは立ち上がり、鍵を開けるためにドアノブに触れた。そんな彼の前に血まみれになったカッターの刃が現れ、そして――

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