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デュエル・マスターズについて語る非公式ファンサイトです。
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デュエル・マスターズ初心者向けを意識した記事を書いています。
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『DM企業戦士 時任俊之助』

第??話 解体人形の逆襲


「カンパーイ!」
元気の良い声と共に、四つのグラスが音を立ててぶつかる。四人の若者は冷えた飲み物を口に運んだ。
「ウーロン茶、うまい!いいデッキ作った後の一杯は特にうまいよな!」
「時任(ときとう)さん、それ、酒を飲んだ人が言うセリフですよ」
「先輩は飲めないから仕方ないッスね!」
「時任、本当にいいデッキなのか?自己満足なのではないか?」
これは、DM企業戦士最強を決める大会が始まる少し前の話。
時任俊之助(ときとうしゅんのすけ)は同僚の熊本浩介(くまもとこうすけ)、相原文美(あいはらふみ)、そして、ライバルの百瀬光太郎(ももせこうたろう)と食事をしていた。
「うるさいな。ウーロン茶くらいいいだろ。夏の暑さにも負けずに俺ががんばって汗水流してデッキ作ったんだから。がんばったんだから、絶対にいいデッキだ!」
そう言って口を尖らせたのは時任俊之助だ。S社のDM企業戦士にして、DM課の課長である。ちなみに、DM課は時任しかいない。
「あら、時任さん。がんばった事を評価されるのは子供だけですよ」
辛口なコメントの直後に一杯目のウーロンハイを飲みほしたのは文美だ。S社の新入社員で物怖じしない。社内でも人気者だ。
「それに先輩はクーラーの効いた部屋でデッキを作ってたッス!汗水流してないッス!」
声も体も大きい男、熊本。彼もS社に所属する社員で時任の後輩だ。
「社会人は結果が全てだ。どんなデッキを作ろうと、私には勝てんぞ、時任」
最後に発言をしたのは百瀬だ。ライバル会社のN社に所属している。イタリア製のブランドスーツを纏った男で、他の三人に比べて居酒屋が似合わない男だ。
「俺だって、お前には負けるつもりはないぜ。それに、ここに来る前に新しいカード買ったから、家に帰ってもっとデッキを強くするつもりだし」
「どんなカードを買ったんスか?」
「見るか?今、出すからちょっと待ってろよ」
「あ、そう言えばこんな話知ってます?『呪いのカード』の話」
時任が鞄からカードを取り出そうとすると、声のトーンを落として文美が話題を変えた。
「呪いのカード?闇文明にそんなカードあったっけ?」
「俺も詳しくは知らないッス」
「熊本も知らないのか。知ってるの文美ちゃんだけ?桃太郎は?」
「知らん!私は断じてそんなものは知らんぞ!呪いのカードがシングルカードのショップに出回っていて、手にしたプレイヤーに不幸をもたらすなどという噂は知らん!」
百瀬は青ざめた顔で首を振った。普段なら『桃太郎』と呼ばれる事を怒るのだが、今の彼はそうしなかった。
「変な奴だな。で、その呪いのカードって何?こいつが言ったみたいにプレイヤーを不幸にするの?」
「教えてあげましょう。それを知ったらもう後戻りできませんよ、くっくっく!」
文美は精一杯不気味に見えるよう意識して笑う。だが、時任や熊本にはそれが愛らしく見えた、
「やめろ!呪いのカードの話など聞きたくない!」
ただ一人、百瀬には効果があったらしく、彼は耳をふさいで叫んでいた。それを無視して文美は話を続ける。
「呪いのカード。それは元々は何の変哲もないただの一枚のデュエル・マスターズカードだったのです。プレイヤーに勝利をもたらすために生まれたそのカードは、自分を使ってもらう事を楽しみにしていました。ですが、パックから出たそのカードを見た時、カードを当てたプレイヤーは言いました。同じカードのプロモ持ってるからいらない、と」
「プロモ厨かよ」
「そこ!話している時に邪魔しないで下さい!」
文美に怒られた時任は肩をすくめた。
「桃太郎。俺、怒られちゃったぜ」
「終わったか!?呪いのカードの話はもう終わったのか!?」
百瀬に時任の言葉は届いていなかった。文美はウーロンハイを飲み干して話を続ける。
「呪いのカードはカードを当てたプレイヤーの友人の手に渡りました。呪いのカードは新しい主に大事にされましたが、自分を捨てたプレイヤーを恨んでいました。新しい主と自分を捨てたプレイヤーが戦った時、呪いのカードは自分を捨てたプレイヤーに呪いをかけたのです!その結果、自分を捨てたプレイヤーは引きたいカードが引けずに負けてしまいました」
「なんだ。呪いのカードっていいカードじゃないか」
「そうッスね。プレイヤーに勝ちをくれるなんていいカードッス」
時任と熊本は笑いながら話を聞いていた。熊本は酒が入っているのもあって、普段の二割増しの豪快な笑い声だ。
「何を笑っている!?呪いのカードの話ではないのか!」
という百瀬の叫びもかき消されるほどだ。
「そう、それだけならいいカードです。しかし、それは呪いのカードなのです。新しい主がデッキからそのカードを抜いた時、新たな呪いが主を蝕みます」
「あー、呪いのカードだって知らずにそのカードをデッキから抜いちゃったのかー。いるよなー、そういう奴。ホラーもので、気がついたら死亡フラグ立てちゃう奴」
時任はまた茶化して言ったが、熊本がそれに乗って来ない事に気付き、黙って話を聞いた。
「呪いのカードは自分がデッキから抜かれた事を嘆き、悲しみました。それは怒りと恨みへ変わりました。邪悪な感情に支配された呪いのカードは第二の主に呪いをかけたのです」
「で、第二の主にかけられた呪いって何?いいカードが引けなくなるとか?」
「第二の主は呪いのカードに呪われて、寝たきりになってしまいました。今も、ベッドの上から起きる事が出来ないみたいです」
(予想以上にヤバい呪いだった!)
自分の想像以上に危険な呪いのカードの力に時任は恐怖した。もう自分の感想も言えないほどだった。
「デュエルが出来なくなった主の元を離れ、呪いのカードは新しい主の元へ旅立ちました。自分を大事に扱ってくれる間は、呪いのカードはそのプレイヤーに力を与えましたが、デッキから自分を抜くと同じように呪いをかけました。第三の主は事故に遭って意識不明の重体になってしまいました。自分を大切にしない者に復讐した呪いのカードは新しい主を探してどこかを彷徨い、また同じ事を続けました」
もう、文美の話を茶化す者はいない。重い何かと夏とは思えない冷たい空気が彼らの上にのしかかっていた。
「こうして、呪いのカードは今でもどこかのショップにシングルカードとして売られているのです」
文美の話が終わった。暑さを感じていたはずの時任はそれを忘れて悪寒を感じていた。
「もう、終わったか?」
百瀬の情けない声を聞いた二人は、そこでようやく恐怖と緊張から解き放たれた。ひきつったような笑いと共に口を開く。
「い、いやー。作り話にしては怖かったなー」
「そ、そうッスね。そう言えば、先輩。カード買ったんスよね!どんなカード買ったか見せて欲しいッス!」
「おお、待ってろ!」
時任は鞄から、近くのカードショップの袋を出した。勢いよく袋を開けると、中のカードがテーブルの上に飛び散った。
「うわ、やべ!」
「もー、気をつけて下さいよ、時任さん。あ、やっぱり火のドラゴンのカードなんですね。子供みたい」
「先輩、大丈夫ッス!カードは汚れていないッス!」
「ふん、そそっかしい奴だ。ん?」
四人はテーブルの上に散らばったカードを片付けていると、百瀬が一枚のカードを持ったまま動かなくなった。
「どうしたんだ、桃太郎?」
他のカードを受け取った時任は百瀬に向かって手を伸ばす。それに気付いた百瀬は
「ああ、お前にしては珍しいカードを買ったものだと思ってな」
と、言って自分が見ていたカードを時任に返した。
時任が受け取ったのは古びた《解体人形ジェニー》のカードだ。新品同様だった他のカードと違い、細かい傷がついて、少し色あせている。買った覚えのないカードを見て、彼は首をかしげる。
「あれ?俺、こんなボロボロのカード買ったっけ?」
「さっき買ったばかりのカード、もう忘れちゃったんスか?」
「ボケが始まったんじゃないんですか?」
「ん~、そうなのかな~。使うつもりないカード買ったのかな~」
時任は頭をかいて《ジェニー》のカードを見た後、それも一緒に鞄にしまった。その時、《ジェニー》のカードの目が怪しく光った事に気付いたものはいなかった。

「あれ、もう朝か?……って、なんじゃこりゃ!」
寝ぼけた顔で周りを見ていた時任だが、異様な景色に目を覚ます。
夜のように真っ暗な世界だ。そして、大量の十字架が時任の周囲を囲んでいる。その十字架には何かが磔にされていた。
時任は恐怖しながら磔にされたものを見る。それは人間くらいの大きさのデッサン人形だった。顔には十代くらいの少年の顔写真が貼り付けられている。それらの表情は全て顔を痛みや恐怖で歪めているようなものだった。笑顔の写真など一つもない。
夏なのに、時任は身震いした。ここが肌寒いという事もある。だが、それ以上にこの光景に寒さを覚えた。
「おかしいな。俺、昨日は酒飲んでないから、こんな幻覚見ないと思うけど」
時任は昨晩の事を思い出していた。文美がすすめてくる度数の低い酒を全力で断っていた。途中、ウーロン茶とウーロンハイを間違えて飲みそうになったが、飲む事はなかった。
もちろん、自分で酒を買って飲む事もない。仲間達と別れてから、帰宅して眠るまでの記憶を思い出してみたが、異常はなかった。
「うん、飲んでないぞ。飲みそうになっただけだから、あれは未遂だ」
「そうそう。大人なのに、全力でお酒から逃げちゃってみっともなーい」
「いや、そういうもんじゃないぞ。大人でもお酒が苦手な人は飲んだらダメだ。全力で酒から逃げる事は悪い事じゃ……、アレ?」
自分以外の声が聞こえて時任は振り返る。そこに立っていたのは、見知らぬ少女だった。しかし、その少女の名前を時任は知っている。
「解体人形ジェニー……」
「そうよ!」
「のコスプレ?」
「ちっがーう!」
目の前の少女は全力で叫ぶと巨大なカッターを時任に向ける。その目つきは、敵を威嚇する獰猛な野生動物のようだった。
「ふざけた事言ってると切っちゃうわよ!」
「ひえー!ごめんよ、コスプレさん!」
「コスプレじゃない!私は解体人形ジェニーそのものよ!」
「え?」
怯えた時任が彼女をよく見ると、肘や膝にはデッサン人形と同じような球体間接が見える。
(リアルなコスプレだ)
時任は口に出そうとした言葉を飲みこむ。彼でも空気を読む事くらいはあるのだ。
「で、その解体人形ジェニーが何の用?俺、大事な大会があるから早く出かけなきゃいけないんだけど」
「そんなの、行くだけ無駄よ。あんたはその大会では勝てない」
「何だと!?」
目の前のジェニーに怯えていた時任はその一言を聞いて憤慨する。
「どういう意味だよ!?俺のデッキは最強だぞ!」
「自分のデッキが最強とか小学生みたいな言い方ね。いいわ。教えてあげましょう。何故なら、このジェニー様は呪いのカードだからです!」
「え……?」
自信満々の表情で言ったジェニーの言葉を聞いて、時任は目を丸くしている。
「どう?驚いたでしょう!」
「呪いのカード?何それ?」
「あんた、馬鹿じゃないの!?昨日の晩御飯の時の話、忘れたの!?」
「あ……」
そう言って時任は昨晩の記憶を辿り始めた。乾杯の直後に文美から呪いのカードの話を聞いている。その後の会話が楽しくて、呪いのカードの話など記憶から抜け落ちていた。
「思い出した」
「判った!?私は噂に出て来た呪いのカードよ。あんたが買ったカードと一緒に紛れ込んでいたの」
「でも、何で俺が呪われなくちゃならないんだよ!」
叫びながら時任は昨日の自分の発言を思い出していた。呪いのカードの話を聞いた直後、ジェニーのカードを見て「使わない」と言ったのだ。それが原因かもしれないと思い、怯えている。
「どうしても思い出せない?」
「俺は呪われるような事はしてないからな!」
(ヤバい。昨日のアレが原因だったら絶対呪われるぞ!どうしよう?)
冷や汗をかきながら時任はジェニーに言う。その様子を見たジェニーは眉を吊り上げて持っていたカッターを突き出した。
「ひえっ!暴力反対!」
時任は目を閉じて反射的に両手を前に出した。しかし、何も起こらない。恐る恐る目を開けるとジェニーは時任の掌にカッターの切っ先を突き付けていた。
「な、なんだよ」
「この手よ!この手!あんた、トイレ行った後、手を洗わなかったでしょ!その手で私に触った!」
「……あ!」
確かにジェニーの言う通りだった。カードショップのトイレに入った後、時任は手を洗わずにカードを物色していた。
「それだけで俺を呪うの?」
時任の呆けたような声を聞いてジェニーは顔を真っ赤にする。怒りの噴火が始まったようだった。
「それだけとは何よ!汚いおっさんがトイレに行っても洗わない手でうら若き乙女のやわ肌に触れるなんてサイテーよ!サイテー!」
「おっさんって言うな!俺は二十代だぞ!」
「問答無用!罰を与えてやるわ!」
ジェニーはどこから取り出したのか、デッキをテーブルに置いた。それを見て時任は彼女が何をしようとしているのか理解する。
「デュエルか。いいぜ。俺の最強デッキで負かして泣かせてやるよ!」
時任が念じるとテーブルの上にデッキが現れた。彼がその中身を確認するために手に取ると、周囲からうめき声が聞こえた。
「な、何だよ!」
うめき声は一つや二つではない。十字架に磔にされた人形全てがうめき声を発している。
「こいつら、不気味だな」
「あんたもすぐにその仲間入りをするのよ」
「何だって!まさか……!」
時任はジェニーの言葉を聞いて理解する。周囲の人形の正体に。
「ここにいるのは全員、私に負けて呪われた奴らよ。時任俊之助、あんたには最悪の呪いをプレゼントしてやるわ!あんたはこの戦いに負けたら死ぬのよ!」
「げげっ!その呪いはヘビーすぎない?最近のデュエル・マスターズのマンガだって負けて死ぬとかはないんだぜ?塩と砂糖を間違えるとか、醤油とソースを間違えてかけるとか、タンスの角に小指をぶつけるとか、そういうのにしない?」
「しない!くくく、あんたは私の呪いで死ぬ最初の相手よ。記念に覚えておいてやるわ!」
「マジかよ……」
時任は自分のデッキを見つめる。負けたら死ぬデュエルなどした事はない。
(こんなプレッシャー初めてだ。だけど……)
自分のデッキを見ていると自身が湧いてくる。根拠のない自信だが、時任はそれを信じて戦い、勝ってきた。
「いいぜ!相手になってやる!呪いなんかに負けるか!」
「みんなそう言って負けていたわ!あんたも呪ってやる!」
こうして、時任とジェニーのデュエルが始まった。
「《トップギア》を召喚してターン終了だ」
先にクリーチャーを召喚したのは時任だ。クリーチャーのコストを下げる《一撃奪取 トップギア》を召喚して自分の手札を確認する。
(大丈夫。次のターンに《燃えるメラッチ》出せば、俺の切り札のコストがグッと下がる。ちょっと早いけれど、その次のターンで切り札を出して圧勝してやるぜ!)
「何か企んでいそうね」
「別に!」
上ずった声で返した時任を見たジェニーは「まあいいけど」と言ってマナゾーンにカードを置いた。彼女が使っているカードは全て闇文明のカードだ。
「企みが形になる前に潰してやるわ!《ゴースト・タッチ》!真ん中のカードを捨てなさい!」
「げっ!真ん中はやめて!」
「いいから捨てなさい!」
手札の中央にある《燃えるメラッチ》を捨てられたくない時任は必死でそれを押さえる。だが、見えない力が《燃えるメラッチ》を弾き飛ばして墓地まで送った。
「何か吹っ飛ばされたぞ!超能力みたいなので人のカードを捨てるなんて卑怯だぞ!」
「うるさい!ルールに従わないあんたが悪い!」
ルールを持ち出されたら言い返す事は出来ない。時任は残念そうな目で《燃えるメラッチ》を見た後、カードを引いた。
「だったら、こっちのメラッチだ!《エヴォル・メラッチ》を召喚だ!進化クリーチャーを手札に加えるぜ!」
時任が加えたのは《革命龍 アサルト》だった。手札補充のカードを入手出来た事に満足した時任は《トップギア》のカードに指を添える。
「次のターンで《アサルト》に進化してやる!だけど、その前に《トップギア》でシールドブレイクだ!」
ジェニーは不機嫌そうな顔でブレイクされたシールドを見た。すぐにその顔が妖しい笑みに変わる。
「げっ!もしかして、やっちまった!?」
「そうよ、やっちまったのよ!シールド・トリガー《ゴースト・タッチ》!今度は私から見て一番左のカードよ!」
時任は慌てて指定されたカードを押さえる。そして、何かを訴えかけるような目でジェニーを見た。
「ねえ、これはやめない?」
「そんなに慌てるって事は、それはいいカードね!それ以外を選ぶもんですか!早く捨てなさい!」
「あっ!」
時任が叫ぶのと同時に、見えない力で手札が飛ばされる。ジェニーは満足した顔でその様子を見ていた。
「いい気味ね」
「それは俺が言うセリフだけどな」
時任はそう言うと、飛ばされたカードをつかんで場に出した。その行動の意味が判らず、ジェニーはそのカードを見た。
「気付いただろ?こいつは《若頭の忠剣ハチ公》だ!手札から捨てられる時に場に出る!そして、同じ《ハチ公》のカードを山札から手札に加えられるんだぜ!」
これで時任のターンが終わる。次の彼のターンで《アサルト》が出たら、ジェニーのシールドを全てブレイクする事が出来る。
「トイレ行った後に手を洗わないくせに、結構やるわね。さすがDM企業戦士といったところかしら?」
「もっと褒めていいんだぜ?あと、手を洗わなかった事をそんなに連呼しないで」
勝利を確信した時任はドヤ顔でジェニーを見る。ジェニーは不機嫌そうな顔で自分の手札を見ていた。
「ま、これが実力差って奴だよ、呪いのカードちゃん。今まで呪いとデュエルの力で色々な奴をやっつけたみたいだけど、それでも適わない相手がいるって事。判る?」
「それ、私が呪った十三人目の奴が言っていたわ。その後、泣いて謝ったけどね!」
ジェニーは一枚のカードを出した。その後、時任の《トップギア》を指す。
「《爆弾団 ボンバク・タイガ》召喚!マナ武装で《トップギア》のパワーをマイナスして破壊よ!」
「うわーっ!」
クリーチャーのコストを下げる《トップギア》が破壊されてしまった。これでは、このターンに《アサルト》を出す事が出来ない。
「私のデッキは闇文明のデッキよ。手札もバトルゾーンも破壊して呪い尽くしてやるわ!」
そう言ったジェニーの目が赤く輝く。呪いのカードからの手痛い逆襲に、内心舌打ちしながらカードを引いた。

それから数ターンが経過した。
ジェニーの破壊戦略は凄まじかったが、時任も負けてはいなかった。
互いにシールドは二枚。時任のバトルゾーンにクリーチャーはいない。しかし、ジェニーの場には《侵略者フワシロ》がいる。
「数で負けてるか。だけど、俺のターンだ!《エヴォル・メラッチ》を召喚!そして、今、効果で手札に加えた《アサルト》に進化だ!」
時任は山札の中を確認してジェニーにカードを見せる。得意気な顔だった。
「《燃える革命ドギラゴン》だ。今はマナが足りないけれど、次のターンでこいつに進化して勝ってやる!だけど、その前にシールドをなくしておくか!《アサルト》でW・ブレイク!」
ジェニーは破られたシールドを見た。最後のシールドを見た時、彼女の殺意に満ちた笑顔が時任の目に届く。その瞬間、時任の表情は凍りついた。
「おい、まさか……」
「そのまさかよ。シールド・トリガー!《凶殺皇デス・ハンズ》!《デス・ハンズ》は出た時に相手のクリーチャーを破壊できるクリーチャーよ!これで《アサルト》を破壊してやるわ!」
再び、時任のクリーチャーは0になってしまった。
「土壇場でシールド・トリガーなんてなかなかやるじゃないか」
恐怖を押し殺して時任はジェニーを挑発する。まだ、時任は自分の勝ちを信じているのだ。手札には《燃える革命ドギラゴン》が二枚ある。《ゴースト・タッチ》で一枚捨てられてももう一枚がある。そして、ジェニーのクリーチャーはシールドを一枚しかブレイク出来ない。二体いても怖くはない。
「上から目線で偉そうに。今からそのにやけた顔をひっぱたいてやるわ!まずは召喚!」
ジェニーが召喚したのは《崩壊の悪魔龍クラクランプ》だった。それを見た時任は思わず声をあげる。
「スレイヤーブロッカーかよ……」
《クラクランプ》のパワー自体は高くはない。だが、バトルに負けても相手を道連れに出来るスレイヤーを持っている。《ドギラゴン》が強くてもスレイヤーブロッカーにブロックされたらなす術がない。
「そして、《フワシロ》で攻撃!」
「マジ!?」
時任にとっては待ち望んでいた攻撃だった。これで手札が増えれば《ドギラゴン》の進化元を出せるかもしれない。勝つチャンスはある。
「そして、侵略」
しかし、ジェニーが放った一言で望みは断たれる。彼女が《フワシロ》の上にカードを置いた時、時任は叫んだ。
「やめろ!それって……!」
「《復讐ブラックサイコ》。場に出た時に相手の手札を二枚捨てる侵略の進化クリーチャーよ!《ドギラゴン》ともう一枚を捨てなさい!」
時任は泣きそうな顔で二枚の《ドギラゴン》を墓地に置いた。それを見たジェニーは満足した顔でシールドを見る。
「ど、どうなっても知らないぜ!《アサルト》で山札を見た時にシールドにシールド・トリガーがあるのを見たんだからな!逆転してやるからな!」
「嘘がバレバレよ。そんな顔で言っても説得力がないわ!W・ブレイク!」
ジェニーが言う通りだった。時任のシールドにシールド・トリガーはない。彼が二枚のシールドを手札に加えるのを見た時、ジェニーは勝利を確信した。
「見たか!これが呪いよ!《デス・ハンズ》でとどめ!」
ジェニーは《デス・ハンズ》に指を添えた。そのカードがタップされる瞬間、時任は言う。
「間違えた」
「プレイの反省のつもり?」
ジェニーは最初、戦略をミスした事に対する反省だと解釈した。しかし、時任が二枚の手札から一枚のカードを引き抜いた時、それは誤りだと気付く。
「入っていたのはシールド・トリガーじゃない。革命0トリガーなんだぜ!」
時任は笑顔で一枚のカードを見せる。それは、革命0トリガーの呪文《革命の鉄拳》だった。
「これがどんな呪文か判るよな?山札を四枚めくって火のクリーチャーなら相手に見せる。見せたクリーチャーよりパワーが低い相手クリーチャーを破壊する!」
「でも、そんなに都合よくクリーチャーが出るとは限らないじゃない!」
「俺は《アサルト》で山札を見たんだぜ?入っているのを知ってるんだよ!」
時任は四枚の中から《ハチ公》を選んだ。パワーが1000上回るため、これで《デス・ハンズ》が破壊される。これ以上の攻撃が出来ないジェニーは悔しさに歯噛みをして時任を見た。
「ドローした。これで俺は勝つ」
「何よ!クリーチャーもない状態で、私の《クラクランプ》を破壊して勝てるもんか!」
「大丈夫だ。ギリギリだったけれど、今のドローで何とかなった!まずは《爆裂B-BOY》を召喚!火の進化クリーチャーのコストを1減らしてこいつに進化だ!」
時任は召喚したばかりの《爆裂B-BOY》に一枚のカードを重ねた。
「やっぱり火のドラゴンは俺の相棒だな!《爆ぜる革命 ドラッケンA》!革命2を使ってジェニーのパワー13000以下のクリーチャーを全滅だ!」
《爆ぜる革命 ドラッケンA》が出ただけで全てがひっくり返ってしまった。これでジェニーのクリーチャーは全滅。あとは時任がとどめを刺すだけとなった。
「もう手札もシールドもないお前に身を守る手段はない!《ドラッケンA》でとどめだ!」
「う、うわあああ!!」
負けを認めたのか、ジェニーの体が黒いガス状の物体になって崩壊していく。それと同時に空から明るい光が差し込む。
「あっぶねぇ……。でも、勝ったぞー!何が呪いのカードだ!」
時任が笑顔でガッツポーズした時、光が彼とその場の全てを包んだ。

「ん~、むにゃむにゃ……、勝ったぞー、何が呪いのカードだ」
時任は寝言で呟いた。その表情はリラックスしたものだ。
だが、数分後に彼の表情は恐怖に変わる。何故なら、時計の針は既に大会開始時刻の十分前を刺していたからだ。
枕から少し離れたところに呪いのカードが置かれていた。時任の様子を見て復讐心が収まったのか、誰にも聞こえないような声で静かに笑うと風に吹かれて飛んでいった。窓から外に出たそのカードは、今、どこにあるのか誰も知らない。

おわり(みんなも呪いのカードに気をつけよう!)

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