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デュエル・マスターズについて語る非公式ファンサイトです。
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デュエル・マスターズ初心者向けを意識した記事を書いています。
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TOKYO決闘記・真





私、一ノ瀬博成(いちのせひろなり)はカードゲーム専門の雑誌で記者をしている。
天龍寺(てんりゅうじ)リズと共にリニューアルオープンしたテーマパーク『デュエトピア』に向かった私は、そこで『スタンプ』の中でも最強のチーム『新生球舞(ネオきゅうぶ)』のメンバーに遭遇する。一井斧馬(いちいおのま)と二宮砲助(にのみやほうすけ)。保持者でありながら『スタンプ』のメンバーとして行動する彼らは保持者を狩る為だけに行動する強敵だ。
敗北したらデュエルに関する記憶を失いデュエル・マスターズカードに対する恐怖心を植え付けられるリスクを背負いながら、リズは斧馬に挑み、勝利する。リズの情けにより、斧馬は倒される事なくその場を去るのだった。

20XX年 一ノ瀬博成

第五話 真っ赤な閃光

一ノ瀬博成と亀井幸平(かめいこうへい)は夜の公園にいた。『無の領域』の効果で全てのものが夜でも白い。この状況では朝も昼も夜も変わらない。
二人は真っ白な空間の中で同じ光景を見つめている。手の甲に黒い模様がある少年二人がデュエル・マスターズで戦っている。クリーチャーの咆哮や激突する時の音を聞いても、博成と亀井の表情は変わらない。
「もうすぐ終わりそうだね。それにしても、亀井君の能力はすごいね。十人いたのに、もう残り二人だよ」
「ええ。僕自身はこの能力、あまり好きではないんですが……」
戦いが終わり、一人が倒れた。残った一人は倒れた仲間には目もくれず、ふらふらした足取りで亀井に向かって歩く。その目は血走っていた。まともな精神状態ではない。
「最後の一人は僕が相手をする。それが礼義だ」
亀井は緑色をした自分のデッキを持って最後の一人に近づいた。

『スタンプ』最強のチーム『新生球舞(ネオきゅうぶ)』の九鬼拳慈(くきけんじ)はチームメイトでパートナーの八景盾一(はっけじゅんいち)の家にいた。
ボイスチャットを使った会議まであと五分だ。今日の議題は『新生球舞』のメンバーを超える力を持つ可能性がある天龍寺(てんりゅうじ)リズを誰が倒すかという話だ。メンバーの一人、一井斧馬(いちいおのま)が敗走した話は全員が知っている。
「あー、こうするかなぁ」
盾一のベッドで寝転がりながら拳慈は呟く。水色の壁紙が目に入った。それは盾一が好きな色のひとつだ。
「何か考えているのか?」
椅子に座りノートパソコンに向かっていた盾一は振り返って拳慈を見る。拳慈は上体を起こして盾一を見た。
「とりあえず、保持者の中で最強の亀井幸平と天龍寺リズを倒すべきだっていうのは盾一の考えなんだよな」
「そうだ。撃墜王の亀井幸平と得体の知れない力を持つ天龍寺リズ。この二人が邪魔だ。単純な実力で考えるなら一ノ瀬博成が最も強いが、彼は旧世代の保持者だ」
「判った。この部分では俺の考えもお前の考えも違っていない。で、提案なんだけど、俺、天龍寺リズと戦おうか?」
その提案を聞いた時、盾一は眉間にしわを寄せた。拳慈がおかしな事を言った時の彼の癖だ。それは呆れている時の仕草だ。
「一応、聞いておこう。何故、そんな事を考えた?」
拳慈は自分の拳で頭を数回叩く。考えがまとまらない時の癖だ。
「何となく、っていう理由じゃお前は納得しないよな。でも、何となくなんだよ。何となく、こいつは放っておきたくない。このまま、天龍寺リズを野放しにしていたら、俺達の計画にとって良くない気がする」
「負けた斧馬を逃がすような甘ちゃんだ」
「とどめ刺すより、そういう余裕がある奴の方が怖いって。それに、砲助(ほうすけ)が『レンズ』で見た時はAを超えそうだったんだろ?」
二宮(にのみや)砲助の能力『レンズ』は相手の能力の測定だけでなく、『無の領域』で行われたデュエルの記録にも使える。リズと斧馬のデュエルの映像は『新生球舞』のメンバー全員が観た。
「あれは何かの間違いだろう」
「そう考えるのはよくないぜ」
「それに、お前は亀井幸平と戦いたがっていただろう」
「そうなんだよ!亀井も天龍寺もどっちも俺が倒したいんだ!」
「天龍寺は誰か別の者に頼もう。亀井の撃墜数は無視できない。戦闘に特化したお前の出番だ」
「あいよ。ったく、これでも『新生球舞』のリーダーなんだからもうちょっと敬えっての」
そう言って拳慈はベッドから立ち上がってドアに向かう。
「会議は任せておけ。槍汰(そうた)には天龍寺リズ討伐を伝えておく」
「頼むぜ」
拳慈が部屋を出た瞬間、スピーカーからアラームのような音が聞こえる。オンライン会議が始まったのだ。盾一はノートパソコンの方を向き、マイクに口を寄せた。
「今日は貴重な時間を割いて集まってくれてありがとう。さて、今日の議題だが……」

「どうぞ!」
その日、一ノ瀬博成はデュエルカフェ・レッドにはいなかった。彼のファンを自称する最上(もがみ)アオイのテーブルにリズがたこ焼きを置く。
「え~、アオイ、これは頼んでないですぅ」
「知ってるぜ。前に残したのも知ってる。だから、リベンジの為に改良したんだ!店からのサービスだから遠慮なく食ってくれ!」
「え~、でも~」
「いいから!自信があるんだ!」
リズの視線を真正面から受け止める事をやめたアオイはテーブルの上のたこ焼きを見た。その後、またリズの顔を見る。リズの顔とたこ焼きの間を行ったり来たりしていた。
「はい、そこでストップですよぉ~!」
そこで一人の人物が会話に入り込む。店長の道方愛菜(みちかたまな)だ。
リズの両肩をつかんでアオイから引きはがす。
「ちょ、ちょっと店長!」
「リズさん、今は忙しいので厨房の手伝いに入っちゃって下さい!これは店長命令ですよぉ~!」
愛菜に言われたリズは仕方なくその場を去って厨房に向かう。リズを見送った愛菜はアオイを見た。
「困らせてしまったみたいでごめんなさいね。あの子、たこ焼きに自信があったみたいでぇ~。あ、このたこ焼きはお店からのサービスですっ!ごゆっくりなさって下さいねぇ~!」
愛菜はテーブルの上にアオイが注文したアイスティーを置くと去っていった。アイスティーを飲んだ後、アオイはたこ焼きに手をつけずに去っていった。
それを見てリズと元『スタンプ』のメンバー達、子供達が手つかずのたこ焼きが置かれたテーブルに集まる。
「何で食わないんだ!リズ姐さんの想いがつまったたこ焼きなのに!こんなにうまいのに!」
「あ、お前ばかり食べてずるいぞ!」
元『スタンプ』のメンバー達と子供達はたこ焼きに群がる。それを見る事なく、リズは腕を組んで考えていた。
「リズさん、どうしてあの子がたこ焼きを食べてくれないか考えているみたいですねぇ~」
「げっ!何で考えてる事が判ったんですか!?店長ってエスパー?」
「リズさんの顔に書いてあったからです。……いや、顔を触って確かめないで下さいよぉ」
顔を触ってどこに書いてあるのか確かめていたリズは、それを止めて愛菜を見た。その視線の意味を理解した愛菜は言う。
「一回目に食べなかった理由は判りません。でも、今日食べなかった理由は判りますっ。食べたくなかったからです!」
愛菜が力説する姿を見てリズは目を丸くしていた。
「それだけ?」
「それだけです。私達の仕事はなんですか?」
「料理を作る事」
「惜しいっ!お客様が食べたい料理を作る事なのですっ!食べたい物を決めるのは私達じゃなくて、お客様なんですよぅ」
シンプルなロジックだった。それ故、リズの胸にその言葉が響いた。
「でも、リズさんの料理はうまいんだから、出されたら食べたくなるんじゃないすか」
元『スタンプ』のメンバーの一人がリズを擁護するように言う。だが、リズはそれを手でさえぎった。
「いや、いいんだ。店長の言う通りだ。あたしは自分の実力に自信があった。そのせいで大切な事を忘れるところだった。店長、ありがとうございます!たこ焼きを食べさせるのは諦めます」
「え?何で諦めちゃうんですかぁ?」
愛菜の口から出たのは予想外の答えだった。リズはまた目を丸くして愛菜を見ている。
「私は、食べたくないものを食べさせるのはやめた方がいいって言ったんですよぉ~。だから、食べたいって思うようなたこ焼きを作ればいいじゃないですか!」
「食べたいって思うようなたこ焼き……。それだ!」
愛菜のアドバイスを聞いてリズは目を輝かせて厨房に向かった。それを見た愛菜は満足したように笑う。

その日、一井斧馬は駅の近くの広場に折りたたみ式のテーブルと椅子を置いて座っていた。テーブルの上には『賭けデュエル。勝った人にはレアカード差し上げます』と書いた札が置いてあった。夏休みという事もあって対戦相手は多い。二時間近くほとんど休む間もなく戦っていた。対戦の合間にペットボトルに入ったスポーツドリンクを飲み、手で額の汗を拭った時、次の対戦相手が近づいた気配を感じて顔を上げた。
「なんだ。砲助か」
そこに立っていたのは斧馬と同じ『新生球舞(ネオきゅうぶ)』の一員、二宮砲助だった。今日も白いパーカーを着てフードをかぶっている。
「なんだ、はないでしょう、斧馬。こんなところで何しているんです。会議に出ないからみんな心配していますよ」
「どんな顔をして会議に出ればいいんだ。僕は保持者に負けて逃げて来たんだぞ」
そう言って斧馬は砲助から目を逸らした。
「拳慈はそんな事を気にする男じゃありませんよ」
「判っている。だからこそ、自分が無様に思えて仕方がないんだ。自信をつけたい。今『ジェイル』の能力を使って色々なプレイヤーを引き寄せているところだよ。いずれ、保持者も捕まえて倒す」
斧馬の能力『ジェイル』はデュエル・マスターズのプレイヤーを特定の場所に引き寄せ、閉じ込める能力だ。室内ならば、閉じ込める事は可能だが、今は屋外だ。引き寄せる能力しか使えない。
斧馬はちらっと砲助を見た。その目は「帰れ」と言っている。砲助は呆れたように溜息を吐いた。
「飲み物を買ってきてあげます。もうしばらくしたら帰りましょうね」
砲助はそう言うと去って行った。斧馬は顔を伏せ、自分のデッキを見る。
ふと、人の気配を感じて斧馬は顔を上げた。そこに一人の少女が経っている。最上アオイだ。
「暑いのに大変ですねぇ。ところで、勝った人は本当にレアカードもらえるんですぅ?」
「もちろん。勝てたらね」
「約束ですよー!」
その様子を見て、斧馬は微笑んだ。「この相手なら赤子の手をひねるように倒せる」と。
「さて、それじゃ、デュエルを始めようか」
そう言って彼はテーブルの上にデッキを置いた。

その日、近くのカードショップに寄った亀井は上機嫌だった。右手にカードショップの名前とロゴが入ったビニール袋を持っている。
待ちに待った構築済みデッキの発売日だ。買ったばかりのデッキについて仲間と語りたいし、対戦もしたかった。数分前に届いたメールで、仲間が全員いつもの喫茶店にいる事は知っている。今日は思う存分語り合おう。
そう思って期待に胸を膨らませた亀井が喫茶店の前の駐車場まで来た時、奇妙な事に気付いた。仲間の一人、青木が頭を抱えてうずくまっているのだ。亀井は急いで彼に駆け寄る。
「どうしたんだい?具合でも悪いの?」
「あ、亀井さん」
彼は弱々しく頭を上げる。だが、亀井が持っていた構築済みデッキの入った袋を見た瞬間、青木は亀井を突き飛ばした。
「何をするんだ!」
転ばないように手をついた亀井は青木に向かって怒鳴る。だが、青木はそれに答えず、頭を抱えたまま唸っていた。
「うう、嫌だ……!怖い、怖い怖い!」
そして、「嫌だ」と「怖い」を連呼して去ってしまう。
「待って!」
奇妙に思った亀井はそう言って追いかけようとする。だが、亀井と青木の間に割って入る者がいた。赤い髪に赤い服に赤い靴の男、九鬼拳慈だ。
「亀井幸平、いい喫茶店の条件って何だか判るか?メロンソーダがうまい事だ。ここのは格別だな。また来るよ」
「何で僕の名を……」
「そりゃ、お前は有名人だからだよ。俺達『スタンプ』の仲間を倒す量がハンパないって。撃墜王だって。昨日は一チーム丸ごと全滅だぜ」
『スタンプ』の名を聞いて亀井の目つきが険しくなる。額に皺が寄った威嚇の表情だ。
「僕達の敵か!仲間に何をした!何の用だ!」
叫びながら亀井は考えていた。本当に知りたいのはそれではない。仲間からのメールが来てから数分で仲間の一人が倒されたのだ。相手がどれほどの実力者なのか。それを知りたかった。
「質問はひとつずつだってばさあ、亀井……。敵という質問にはイエスと答えるぜ。あ、この言い方砲助みたいだな。仲間に何をしたって、デュエルだぜ。全員、俺が倒した。何の用かって質問にもデュエルって答える。当然、俺達がやるデュエルって言ったら、殺るか殺られるかのデュエルだ」
拳慈はそういうと、右手の掌を見せた。そこが光った時、黒い模様が浮かび上がる。
「そのマーク、上級の敵か」
「そうだぜ。オッス、オラ九鬼拳慈!よろしくな!」
相手が亀井の名を知っていたように、亀井も敵の名を知っていた。『新生球舞』のリーダーだ。
「今度は俺が質問する番だな。お前、それって新しい構築済みデッキだよな?そのデッキのカードで何が好き?」
「全員って……、僕の仲間を全員倒したのか?短時間で?」
「質問を質問で返すなあーっ!」
拳慈はそう叫んだ後、人差し指で亀井を指す。
「まあいいや、答えてやるよ。全員倒した。時間はどれくらいだったか覚えてないぜ」
「どんな能力を使って倒したんだ……」
それを聞いた時、拳慈の視線が厳しいものに変わる。
「おっと、その質問はなしだぜ、亀井。お前だってどんな能力で撃墜王になったか教えてくれないだろ?ただ、今までやられた奴らはチームで行動していた。だから、俺は敢えて一人でお前に挑んだ。お前がまだ能力の片鱗を見せないところを見ると、それは正解だったかもな?」
拳慈の読みは当たっていた。
亀井の能力『バトルロイヤル』は複数の敵がいる時に効果を発揮する。敵の怒りを誘発させ、仲間割れを起こし、同士討ちさせる能力だ。その能力で敵の数を減らし、亀井は最後に残った一人と戦う。
故に拳慈一人が相手では意味がない能力だ。
「さて、無駄話はこれくらいでいいか。そろそろ始めようぜ」
拳慈は赤いデッキケースを取り出した。それに反応して、亀井も緑色のデッキケースを取り出した。
彼らの周囲が白と黒だけの単調な世界『無の領域』へと変わる。
それぞれのプレイヤーの前に五枚の壁、シールドが現れ、デュエルが始まった。
「《モリノオウジャダケα》を召喚!」
先に動いたのは亀井だった。カラフルなキノコのクリーチャーがふわふわと宙を舞っている。
「面白い奴を出すな。そいつが出るって事はサバイバーデッキか」
《トップギア》を召喚しながら拳慈が問う。亀井はその問いに答えなかったが、その行動は答えを言っているようなものだった。
《モリノオウジャダケα》は単体ではシールド・トリガー以外に特殊な能力を持たないクリーチャーだ。だが、種族にサバイバーを持つ。サバイバーは味方の能力を借りて自分の力にする事ができる。キノコのクリーチャーが切り札級に変わる可能性だってある。
「《猛毒モクレンβ》!そして《モリノオウジャダケ》で攻撃!」
《モリノオウジャダケ》の横に毒々しい樹木のクリーチャーが現れる。それが緑色の光を発した時、《モリノオウジャダケ》の体も緑色の光を発した。
「《猛毒モクレンβ》がいれば、自分のサバイバーが攻撃した時、山札の上のカードをマナに出来る!マナよ、生まれろ!」
亀井の命令を受けて彼の山札とマナのカードが緑色の光を発する。そして、《モリノオウジャダケ》が拳慈のシールドに向かって突進した。
シールドの砕ける音を聞きながら、拳慈は上機嫌そうに亀井を見る。一方、先制攻撃を決めた亀井は余裕のない表情で拳慈を見る。
「おいおい、張り詰めるなって。もっと楽しもうぜ?せっかくのデュエルなんだ。俺もお前と戦うの楽しみにしてたんだから、そんな顔されると困るって!」
拳慈は話しながら素早く手を動かす。そして、赤い光と爆音と共に一体のクリーチャーが姿を現し、動き出した。
「《トップギア》の力を使った。コストを減らして3コストで《轟速 ザ・ゼット》を召喚!そのままシールド攻撃!」
バイクに乗ったクリーチャー《轟速 ザ・ゼット》は拳慈が言い終わるよりも早く亀井のシールドに向かって突撃する。シールドに触れるのと同時に《ザ・ゼット》の体は爆発した。砕けたバイクの破片が散弾のように飛び散り、亀井のシールドに穴を開けて行く。
「《ザ・ゼット》は超軽量のスピードアタッカーでW・ブレイカー。だけど、攻撃の後でぶっ壊れちまうんだ。まあいいや。《トップギア》も攻撃!」
拳慈の《トップギア》が放った矢が亀井のシールドを貫く。このターンで、五枚あった亀井のシールドは二枚になってしまった。
「何故だ……?」
「あん?」
亀井は震える声で呟き、対峙している拳慈を見た。いや、それは見るなどという生易しいものではない。眼光で敵を射ぬこうとしていると言ってもいい。
「何故、まともにやったら強いのに『スタンプ』の……、『新生球舞』のメンバーなんかやってるんだ!ちゃんとしたプレイヤーなのに!」
威圧的な視線を受けながら、拳慈は軽い調子で返す。
「『無の領域』でのデュエルなら絶対、イカサマできねえし」
「そんな理由で……?」
「それに、ピリピリした真剣勝負とか楽しいし」
「理解できないよ……」
「そっか」
少し寂しそうに言った拳慈。だが、すぐにいつもの調子を取り戻し、陽気な声で言う。
「ほら、お前のターンだぞ!こんなところで終わりじゃないだろ!」
拳慈の声を聞いて、亀井はカードを引いた。再び、彼の目に闘志が宿る。
「そうさ。終わりじゃない。君を倒して僕は戦い続けるんだ」
静かな闘志を燃やしながら亀井は自分の手札を見てプランを考え始めた。

近くのコンビニに寄った砲助は斧馬が好きなオレンジの炭酸を買った。デュエルをした後の彼は炭酸を好んで飲むのだ。今の斧馬には気分転換が必要だと砲助は感じていた。しかし、どうすればいいか判らない。とりあえず、しっかりと水分補給をさせれば落ち着くだろうと考えていた。
しばらく歩いていると、真っ青な顔をした斧馬が走って来た。何が起こったのか聞く前に斧馬が叫ぶように言った。
「砲助!僕は何であんなところにいたんだ!何で賭けデュエルなんて……!」
自分の言った言葉に怯えたらしく、斧馬は頭を抱えてうずくまった。ただ事ではない様子の彼を見て砲助は駆け寄る。
だが、斧馬は立ち上がると頭を抱えたまま走り去ってしまった。呆然とした砲助だが、すぐに追いかける。
しかし、斧馬と砲助では体格が違う。小柄な砲助は斧馬を見失ってしまった。どうしたらいいか判らなくなった砲助は、斧馬が賭けデュエルをやっていた広場に向かった。
砲助がそこに着いた時、そこにはカードが落ちて散らばっていた。それを拾おうとした時、砲助は一枚の白い紙に気付いた。名刺サイズのそれはメッセージカードのようだった。それにはこう書いてあった。
『次はお前だ』

「《ドンドン吸い込むナウ》で《ロードスター》を手札に!」
亀井と拳慈のデュエルは続いていた。亀井の呪文によって拳慈の唯一のクリーチャーが手札に戻る。しかし、亀井もよい状況とは言えなかった。拳慈の激しい攻撃によってシールドは残り一枚、クリーチャーは《モリノオウジャダケ》のみとなった。
「今、《ドンドン吸い込むナウ》で手札に加えた《モリノオウジャダケ》を召喚。ターンエンド」
そして、引きも良くなかった。切り札を引けずにいる。
「あれ?攻撃してこねえの?」
不思議そうに聞く拳慈のシールドは三枚。クリーチャーがいなくても、巻き返せる状況だ。
「今、出せるのはこいつくらいか。《ロードスター》を再度、召喚!」
拳慈は手札に戻された《双砲 ロードスター》を場に出した。《ロードスター》が手を上げた時、拳慈のマナゾーンで爆発が起こる。爆風を受け《ロードスター》の軍服にも似たコートの裾が揺れる。
「これ以上、こいつ戻されたら困るな。出すとマナが一枚、墓地に行っちゃうんだもんな。《ロードスター》で攻撃!」
《ロードスター》の突進で最後のシールドが砕かれる。亀井は祈るような気持ちで砕かれたシールドを見る。それはシールド・トリガーではなかった。しかし、その表情は明るい。それを見た拳慈が口を開く。
「おいおい、シールドがなくなったのに、何でそんな顔してんだよ。負け一歩手前なんだぞ」
「まだ、僕は負けてないと思ったからさ。いや、これなら勝てる!」
亀井がマナゾーンのカード四枚を動かす。それらが光と力を放出するのを見て、拳慈は何かが始まるのを感じていた。
「まず、《超次元ホワイトグリーン・ホール》を使う!これで《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンに!」
白と緑の光に包まれながら、場に少女のクリーチャーが現れる。そして、亀井は自分のカードを一枚、地面に叩きつけた。すると、それは青い光を発して新しいシールドを形成する。
「《ホワイトグリーン・ホール》の特殊能力か!」
「そうさ!さらに《勝利のプリンプリン》の効果で《ロードスター》の動きを止める!」
《勝利のプリンプリン》が《ロードスター》の掌を向けた時、拳慈のクリーチャーは跪く。
《超次元ホワイトグリーン・ホール》はただクリーチャーを呼び出すだけの呪文ではない。呼び出したサイキック・クリーチャーによって追加効果を得る。光文明のクリーチャーを呼び出した時はシールドの追加が可能だ。
そして、《勝利のプリンプリン》は登場時に相手のクリーチャーを一体選び、次の自分のターンまで攻撃できないようにする力を持つ。
三体のクリーチャーが並んだのを見た後、亀井は自分のマナと手札を確認してから宣言した。
「ターンエンド」
さっきとは違い、自信に満ちた声だった。
拳慈の攻撃によって破られたシールドは《ホワイトグリーン・ホール》だった。そして、切り札の《オメガ・ゴライアスδ》も手元にある。《オメガ・ゴライアス》が出れば、亀井のサバイバーのパワーは5000増え、W・ブレイカーを得る。二体の《モリノオウジャダケ》でブレイクして《プリンプリン》で勝つ。それが亀井のシナリオだった。
(大丈夫だ。今、シールドに仕込んだのはシールド・トリガーの《ザ・クロック》。攻撃を受けても、ターンを飛ばして守り切れる。僕は勝てる!)
「一手、遅かったな」
勝利を確信した亀井に水を指すように拳慈が言った。だが、その口調は強がりやはったりではない。
「もし、お前が一つ前のターンでシールドを攻撃して、今のターンで切り札を出してたら俺が負けてたかもしれない。だけど、デュエルに『もし』なんて考えはなしだよな」
拳慈はそう言うと、二枚のカードを場に投げた。その瞬間、赤い閃光が全てを包み、亀井のクリーチャーが炎に包まれる。
「何が……!?」
亀井は訳も判らずに自分のクリーチャーに手を伸ばす。すると、最後のシールドが音もなく砕ける。仕込んだはずのシールド・トリガーが出ずに亀井の手札に戻っていった。
「じゃあな、亀井。楽しかったぜ!」
拳慈の声を聞いて亀井は前を見た。自分の目と鼻の先に赤い閃光が迫っているのが見えた。

連絡に気付いた一ノ瀬博成は急いで喫茶店に向かっていた。仕事に集中していて、仲間からのSOSに気付かなかったのだ。『新生球舞』のメンバーが出た、という簡素な報告だけで博成を不安にさせるのには充分だった。
もう空が夕焼けの色に染まりかけている。焦りと不安を抱えながら博成は走る。流れ落ちる汗が不快だった。
喫茶店の近くの道まで来た時、よく知っている背中を見つけた。亀井だ。
「亀井君!」
急いで駆け寄ると、亀井は振り返った。
「無事かな?他のみんなは……?『新生球舞』は?」
「あの……、『新生球舞』ってなんですか、一ノ瀬さん?」
それを聞いた時、博成はかつてない脱力感に襲われた。『新生球舞』打倒を誓い合った仲間なのだ。それに亀井は冗談でこういう事を言う少年ではない。
「一ノ瀬さん?」
博成が何も言えずにいるのを見て、亀井は声をかける。それに気付いた博成は力なく笑った。
「何でもないよ。気をつけて帰ってね」
「ええ……」
博成の態度に釈然としないものを感じながら、亀井は去って行く。その後ろ姿を見送った博成は近くにビニール袋が落ちているのを見つけた。近寄って中身を見ると、それは発売されたばかりの構築済みデッキだ。亀井はまったくそれを見ようとしなかった。
「駄目だったんだね……」
虚しさがこみ上げた。博成が苦心して集めた仲間は負けたのだ。負の感情が血管を通して体中を駆け巡るような感覚があった。博成はしばらくの間、何も出来ずにそこにいた。

次回につづく

次回予告
私、一ノ瀬博成が集めた保持者の多くは敗れた。そして、頼みの綱の天龍寺リズの前に『新生球舞』の刺客、三浦槍汰が現れる。卑劣な策略を使ってリズを追い詰める槍汰。絶体絶命かと思われたその時、彼女がリズの前に姿を見せる。
次回『第六話 最上アオイは甘くない』
彼女の報酬は安くはない。

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