忍者ブログ
デュエル・マスターズについて語る非公式ファンサイトです。
[967] [966] [965] [964] [963] [962] [961] [960] [959] [958] [957
プロフィール
HN:
ネギ博士
性別:
男性
自己紹介:
デュエル・マスターズ初心者向けを意識した記事を書いています。
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
最新コメント
[03/02 木之本桜]
[03/01 木之本桜]
[02/07 木之本桜]
[05/29 K先生]
[12/25 N-W]
ブログ内検索
お天気情報
カウンター
TOKYO決闘記・真





私、一ノ瀬博成(いちのせひろなり)は天龍寺(てんりゅうじ)リズを仲間にする事に成功した。
デュエル・マスターズのプレイヤーの思考を暴力的に変えてしまう敵『スタンプ』に挑む為、私は選ばれし者、保持者を探していたのだ。私はリズと手を組み、『スタンプ』のチームの一つに戦いを挑んだ。リズは戦いに勝利しただけでなく、チームのメンバーの心をつかみ、改心させる事に成功した。
しかし、この時の私は気付いていなかった。
『スタンプ』の中でも最強のチーム『新生球舞(ネオきゅうぶ)』が動き始めていた事に。

20XX年 一ノ瀬博成

第四話 襲来、新生球舞

地下鉄の駅を出た一ノ瀬博成を待っていたのはまだ暑い夏の日差しだった。暦の上では秋、などというが夏らしさが衰えを見せている様子もないし、終わらない夏休みの宿題に追い込みを見せている子供達の姿も見かけない。
「さてと……!」
博成はデュエルカフェ・レッドで今日は何を食べるか考えながら歩いていた。定番のハンバーグセットか。海老フライセットも悪くない。この二つの選択肢を迷っている時、声をかけられた。
「博成さん、おはようっす!!」
二人の少年が直立不動の状態から綺麗なおじぎをする。手には小さいビニール袋を持っていた。
「おはよう……というか、もうこんにちは、かな?」
彼らはリズに負けたり、説得されたりした『スタンプ』のメンバーだ。「うまいものを食べれば悪い事なんか考えなくなる」というリズの考えは正しく、半分以上のメンバーがリズについて行った。そして、心を入れ替えて行動している。彼らはこの近くの道に落ちているゴミを拾っていたのだ。
「またね」と声をかけて博成はデュエルカフェ・レッドまでの道を急いだ。
博成がデュエルカフェ・レッドの店内に入ると賑やかな声が聞こえた。デュエルスペースに小学生くらいの子供達だけでなく、年齢が上の高校生くらいのプレイヤーがいる。元『スタンプ』のメンバーだ。
「いっちのっせさーん!」
デュエルスペースを見ていた一ノ瀬は声をかけられて自分の目的を思い出した。目の前にやってきた店長の道方愛菜(みちかたまな)を見る。
「いらっしゃいませー!ごはんにします?ごはんにします?それとも、ご・は・ん?」
「今日のおすすめが欲しいですね」
「はいはーい!今日のおすすめはたこ焼きセットですよぅ!」
たこ焼きセット。その言葉を脳が処理しただけで食欲が増した。近くのテーブルを見ると、皿の上にたこ焼きと焼きそばが乗ったセットメニューが見えた。もう博成に逃れる術はない。券売機で食券を買って愛菜に渡した彼は、たこ焼きセットが来るのを待った。
待つ間、再びデュエルスペースを見る。『スタンプ』のメンバーは、何らかの理由で友人と共にデュエルができなくなった者が多い。友人の輪の中にいづらくなった者、居場所にしていた店を追い出された者。色々な者がいる。原因は自分の失態にあるのかもしれないが、まだ十代の子供一人で背負うには重い十字架を彼らは背負った。彼らの罪を咎める者がいる限り、彼らの罰は重くなり、孤立する。
そんな彼らに救いの声をかけた者がいる。
『スタンプ』だ。悪の道に染まる事で罪も罰も孤独も忘れる事を選んだのだろう。だが、それは底なし沼に自ら沈んでいく行為だ。
そんな底なし沼に腕を突っ込んで彼らを引っ張りだしたのが天龍寺リズだ。「おいしいものを食べればいい」という彼女なりの理論で、孤独を感じていた『スタンプ』のメンバーは改心した。
今、デュエルスペースにいる少年達は小学生の子供達にデュエル・マスターズのテクニックを教えている。教わっている子供の中には、この店の常連の翔太(しょうた)の姿もあった。
「おまたせしましたー!たこ焼きセットですっ!」
愛菜の元気な声と共に空腹の博成の目の前にたこ焼きセットが置かれた。ソースの香りが彼の鼻孔をくすぐる。
「今日もおいしそうですね。いただきます!」
熱いたこ焼きを口の中に入れる。その後、焼きそばを口に入れる。炭水化物と炭水化物。ソースの魔力か、具材の魔法か、栄養を考えるとよくないはずの組み合わせが非常に心地よかった。
「このセットはリズさんの発案なんですよぅ。焼きそばは野菜をたくさん入れたから、歯ごたえがよくなってますし」
「そう言えば、リズさんは?」
「ほっほーぅ、やっぱりぃ、リズさんが気になっちゃいますかぁ~?」
口元に手を当てて愛菜が聞く。彼女は横目でデュエルスペースを見た。博成もデュエルスペースを見る。そこにはカードを握った状態で失神したリズがいた。
「デュエルはできないって言ってたのに、したんですか!」
「わたしも止めたんですよぅ。でも、こう言ったんです。今日はできるような気がするぜ!って」
愛菜は両拳をぐっと握ってリズの真似をしてみせた。博成は少し似ていると思った。
ここで彼らの紹介をしておこう。
一ノ瀬博成。
彼はカードゲームの雑誌の記者だ。判り易く読みやすい記事を書く事で多くのファンがいる。過去にアジアカップ三連覇を成し遂げた実績がある為、その実力は折り紙つきだ。
今、倒れている天龍寺リズはデュエルカフェ・レッドの新人店員だ。クラシックなメイド服に近い制服を着る事を好まず、タンクトップの上からシンプルなエプロンをつけて仕事をしている。デュエルが好きでカードの知識はあるのだが、実際にカードを握って対戦する事は出来ない。対戦を始めると失神してしまうのだ。
そして、博成とリズは『スタンプ』と戦う力を持った特別なプレイヤー、保持者だ。彼ら以外にも保持者は存在し、博成は自分の情報網を駆使して仲間を探している。
「まあ、本人がしたいって言ったなら止められないですよね」
「そうなんです!でも、リズさん、やる気だったんですよぉ」
以前、博成が見ていた時は、リズはデュエルをする事に遠慮がちだったように思えた。しかし、今は違う。デュエルに対して前向きになったようで、博成はそれが嬉しく思えた。
「実は渡したいものがあるんですよ。ええと……」
「きゃーっ!」
その時、甲高い声が博成の耳元に届く。同時に彼の左腕に衝撃が走った。見ると、知らない少女が抱きついている。
黒髪ショートカットの小柄な少女だ。水色のワンピースを着ている。歳はリズと同じ程度だろうか。キラキラした目で博成を見ていた。
「君は?」
混乱する頭を動かして博成は言葉を発する。それを聞いた少女は早口でまくし立てた。
「こんにちは!わたし、最上(もがみ)アオイって言います!デュエル・マスターズも大好きで、一ノ瀬さんが記事を書いている雑誌『ランクアップ』も毎号買ってますぅ」
「それはどうもありがと」
「それでそれで!このお店に一ノ瀬さんがよく来るって噂を聞きまして、一ノ瀬さんに会うチャンスを伺っていたんですぅ!」
「そ、そうなの」
「そういう訳なのでぇ!サインをください!」
アオイと名乗った少女は一方的に要求すると一枚のカードを博成に渡した。食べかけのたこ焼きセットをどかすと彼はテーブルの上でカードにサインを書いて渡す。
「はい、これからも『ランクアップ』をよろしく」
「もちろんですぅ!ありがとうございますぅ!」
礼を言うと、アオイは嵐のように去って行った。
アオイが去った後、博成は彼女が抱きついた左腕を見た。
(あまり、押しつけられた感触がなかったな)
「ところで、何か用があったんじゃないんですか?」
「あっ!ああ、そうでした」
突然、愛菜に声を掛けられて驚きながら博成は鞄を見る。そして、そこから二枚のチケットを取り出した。それをじっと見ていた愛菜はそこに書かれた文字を見て声を上げる。
「それは、もしかして、リニューアルオープン間近のお台場『デュエトピア』のチケットじゃないですか!」
お台場の『デュエトピア』は室内遊園地だ。ゲームメーカーの協力を得て作られたデュエル・マスターズ関連のアトラクションが楽しめる施設で、年代を問わず多くの人達を魅了している。この施設は数か月前にリニューアルの為に一時閉園していた。
「そうなんです。それ、関係者用のチケットなんですよ。編集長からもらったんですけど」
博成は二枚のチケットを愛菜に渡す。彼女は賞状でも受け取るように大事にそれを受け取った。それを見た博成は、残っていたたこ焼きセットに箸をつける。
「明日、関係者用のイベントがあるみたいで、オープンの前に新しいアトラクションを先行体験できるみたいなんです。もし良かったら店長さんとリズさん、行って来ませんか?」
「なるほどぉ。おいしい料理を作ったリズさんに恩返しをしたいという気持ちはよく判りました。でも、これはお返しします!」
そう言って愛菜は博成にチケットを返した。意外な返答を聞いて博成は口をぽかんと開けている。
「リニューアルした『デュエトピア』を人より早く遊べるのは魅力的です。でも、それならやっぱりチケットをもらった一ノ瀬さんが行くべきです!」
「そうですか」
戻ってきたチケットを見て博成は考えた。亀井(かめい)達、保持者のメンバーは明日は忙しいと言っていた。幸い、博成は書くべき記事の原稿を仕上げたので時間に余裕はある。しかし、もう一人のメンバーがいない。
(チケットを余らせるのは勿体ないな)
「うーん……」
今のは博成が悩んでいる声ではない。リズの声だ。既に回復したらしく、起き上がって一つのテーブルを見ていた。腕を組んで何か考えている。
「リズさん、どうしたんですかぁ~?」
「あ、店長。これを見て下さいよ」
リズは愛菜に持っていた皿を見せた。博成もそれを見る。それは博成が頼んだものと同じたこ焼きセットの皿だった。焼きそばは残っていないが、たこ焼きはほとんど手つかずで残っている。
「自信、あったんだけどな……」
「きっとお腹がいっぱいになって食べきれなかったんですよ。さっき、一ノ瀬さんのところに来た小柄なお客様のテーブルですねぇ」
「確か、アオイさんって言ってた」
「そうか、こうしちゃいられないぜ!」
リズはそう言うと、中国拳法の挨拶のように右の拳を左の掌に突き付けた。それを見て、彼女を慕う元『スタンプ』のメンバーがやってくる。
「リズさん!殴り込みですか!」
「馬鹿野郎!料理を残された事は嫌だけど、それはあたしの実力不足が原因だ!今から、たこ焼きの特訓をしてリベンジだ!明日は休みだし、がんばるぞ!」
「明日は休み……」
それを聞いた博成は立ち上がってリズに近づく。そして、リズにチケットを差し出した。
「ヒロさん、どうしたんだよ?」
「明日、僕と一緒に行こう!」
それを聞いた元『スタンプ』のメンバー達の目は血走り
「俺達のリズ姐さんがお持ち帰りされた……。一ノ瀬さんなら仕方ない。だけど……!」
と、悔しそうに呟き、愛菜は目を輝かせて
「お持ち帰りはしてないんですけどぉ、特別に許可しましょう!」
と、言っていた。

八王子にあるフライドチキンのショップの店内。
黒スーツに黒いサングラスの男、須磨(すま)はそこにいた。注文した料理には手をつけず、じっと見ている。周囲の人は気になって何度か彼を見た。店員が一度「お持ち帰りでしょうか?」と声をかけたが、彼はそれを否定した。
そんな彼に真っ直ぐ近づいてくる二つの人影があった。須磨もそれに気付き、二人を見る。
「須磨さん、お待たせしました」
一人は高校生くらいの理知的な少年だ。白いシャツの上に紺色のベストを重ねている。乱れていない髪型から優等生らしさを感じさせる。もう一人は彼とは対照的な赤シャツの少年だ。赤い色が好きなのか、ズボンも靴も赤だった。まるで爆発した火山のような形の髪も赤かった。
「拳慈(けんじ)君、盾一(じゅんいち)君、お待ちしていました。さあ、食べなさい」
そう言って須磨は二人にテーブルの上にあったチキンやハンバーガーを進める。
「いただきます」
落ち着いた少年、八景(はっけい)盾一はハンバーガーを手に取る。だが、赤い髪の少年、九鬼(くき)拳慈はハンバーガーを手に取ると
「コッペパンを要求する!」
と、叫んだ。
「では、食べなくてよろしい」
須磨はそう言って彼の手からハンバーガーを取ろうとする。
「ああ、嘘っす!いただきまーす!」
拳慈は須磨の前の椅子に座って食べ始めた。盾一も近くの椅子を取って座り、食べ始める。
「食べながらでいいので聞いて下さい。最近、Bランクのメンバーの多くが保持者に倒されています」
「ふーん、保持者の奴らも結構やるもんだね」
口いっぱいにハンバーガーを頬張った拳慈はそのまま、二個目に手を出す。盾一は一口食べ終わったところだ。
「Bランクのメンバーを倒し、いくつものチームを壊滅させたのは天龍寺リズという保持者です」
それを聞いたところで拳慈の動きは止まった。
「それ、本当かよ?亀井幸平(かめいこうへい)って奴じゃなくて?」
「ええ、亀井幸平ではありません」
「意外ですね」
そこで初めて盾一が会話に参加する。
「事態を重く見た我らが主は君達、『新生球舞(ネオきゅうぶ)』のメンバーに保持者討伐を命じました」
「つまり、好きなように保持者と戦って良いと?」
「そういう事です」
「その一言が聞きたかった!」
須磨の言葉を聞いて拳慈が目を輝かせる。
「須磨さん、当然、強い奴と戦えるんだよな!?」
「保持者討伐ですからね。強い相手と戦う事になります」
「気に入った!」
そう言って拳慈はハンバーガーを飲みこむとフライドチキンに手を伸ばした。
「楽しみだぜ。保持者討伐を最初に成功させるのは俺だ!」
「残念ですが、君ではありません。既に、斧馬(おのま)君に動いてもらっています」
「マジかよ。斧馬かー」
「斧馬なら、負ける事はないでしょうね」
盾一は飲み物に手を伸ばした。
「あー、斧馬が亀井の奴と戦ってたらやだなー。亀井は俺の獲物なんだけどなー。そうだ。盾一!斧馬が亀井と戦おうとしていたら、俺が斧馬と戦おうか!」
「何故?」
「俺が亀井を倒すからだよ!『勘違いするなよ。お前を倒すのは俺だ』って言って戦うんだよ!面白いじゃねぇか!」
「馬鹿が」
吐き捨てるように言った盾一は拳慈を見ずに食事を続けた。
「なんだよぅ。本当の事だけど、ちょっと傷つくだろ」
言い返した拳慈も食事を続けた。
「ごちそうさま!そうだな……」
拳慈は立ち上がり、少し考えてこう言った。
「明日もう一度ここに来て下さい。もっとうまいファーストフードを食わせてやりますよ」
「店員さんに怒られる前に帰りなさい」
須磨の声を聞いて拳慈が去る。盾一もそれに続いた。
「さて……」
須磨はゴミが乗ったトレーを持って立ち上がり、呟いた。
「斧馬君がどれだけ保持者と戦えるか、楽しみです」

翌朝。
博成とリズはリニューアルしたお台場『デュエトピア』の入り口にいた。
「今日はたこ焼きの特訓をしたかったんだけどな……」
移動中はそう言っていたリズだが、今は目を輝かせながら周囲を見ている。二人の周りには開園時間を待つ人が大勢いた。
「楽しそうだな!ヒロさん、周りにいる人、みんなここに遊びに来た人達か!?」
「そうだよ。今日はみんな招待客だから、関係者が多いね」
「そっかー!」
興奮するリズの服装はいつもと同じ赤い半袖のパーカーだった。見慣れた金髪のポニーテールが揺れる。めかしこんでいる訳ではない。
(こういうの、デートみたいかも)
「なあ、ヒロさん。こういうのデートみたいだな」
「ええっ!?」
予想外の言葉を聞いて、博成は慌てる。まるで自分の心を見透かされたような気分になり、目を回した。リズは気にした風でもなく続ける。
「こういうのデートするような相手と来るんじゃないのか?そういう人、連れてきてあげなきゃダメだろ?」
「いないんだよ」
軽く諭すような口調で言ったリズに対し、博成は死にかけたような声で言い返す。その顔を見たリズは、後にこう語った。
「あの時はヤバかったな。『口は災いの元』って言葉あるじゃん?こういう時の事を表しているんだって、よく判ったぜ。とにかく、あの時のヒロさんの顔は本当にヤバかったし、声もヤバかった。思い出したくないくらいなんだぜ。地雷を踏んだ気分だった。あたしは、記憶を失くしたせいか、自分の記憶はどれも大事だと思っているけれど、これだけは別だ。早く忘れたいぜ」
自分の失敗を理解したリズは言葉を選んで口にした。
「あー、えーと、でもさ、今、いなくてももうすぐできるんじゃね?ヒロさん、いい男だし」
「うん、長い間、色々な人からそういう事を言われているけど、彼女できた事なんかないんだ。生まれてから一度もないんだ」
そう言った博成の顔を見た時、リズはさらに危険な領域に足を踏み入れた事に気付いた。失敗に失敗を重ねてさらにひどい状況を作り出してしまったのだ。リズは後にこう語った。
「えーと『沈黙は金』って言葉あるじゃん?あたし、しゃべるのが好きだからこの言葉が理解出来なかったんだけど、この時だけは沈黙が一番いいと思ったぜ」
次の一手を考えながらリズは博成を見た。次こそ何とかしなければならないが、どうすればこの状況を打破できるか判らない。悩みながら言葉を探す。
「きゃーっ!」
その時、黄色い声と共に博成にぶつかる影があった。デュエルカフェにも来ていた最上アオイだ。
「一ノ瀬さん!また会えましたねー!アオイ、感激ー!遊びに来てるんですかー?あ、でも、カードゲームの雑誌の記者さんだったら当然仕事ですよねー!」
「仕事……!」
偶然にも、アオイが発した一言が博成のスイッチを入れた。彼の目に生きた光が灯る。
「そうだよ。編集長が何も考えずに僕にチケットを渡す訳がない。きっと記事を書けって事なんだ!」
博成は愛用のメモ帳を取り出す。そして、リズに熱い視線を向けた。
「リズさんも全力で遊んで感想を聞かせてほしい。君の意見が僕らの雑誌をよくするんだ!」
「お、おう……。がんばるぜ」
リズは博成の変化に驚きながらも頷いた。
「また後で遊んでくださいねー!」
そう言ってアオイは去って行った。
「なんだったんだ、あいつ。あれ……?ヒロさん、メモ帳に何か挟まってるぜ」
「なんだろう?」
メモ帳に挟まっていたのは白い紙片だった。折りたたまれていたそれを博成が広げる。リズもその中身を見た。
『鏡の迷路に気をつけて』
紙片にはそれだけ書いてあった。
「ヒロさん、それ、ヒロさんが書いたのか?」
「いや、僕じゃないよ。まさか……」
博成は去っていくアオイの後ろ姿を見た。さっき開いたばかりの入り口から、中に入って行くのが見える。
「まさか……ね。考え過ぎか。それじゃ、リズさん!この紙片の事は気にせずに遊ぼう!」
「おう!そう言ってくれるのを待ってたぜ!」
二人は期待に胸を躍らせながら中に入る。
『デュエトピア』のアトラクションの面白さは想像以上だった。リズは、VRを駆使したレースゲーム『レッドゾーンのサーキット』やガーディアンを模したジェットコースター『天空の守護者達』のような速くパワフルなアトラクションを楽しみ、博成は闇文明のお化け屋敷『ボーンおどりグレイブヤード』で恐怖し、腰を抜かしかけた。
昼の休憩で『ハムカツ団食糧部』という名前の園内レストランで食事を取った二人はマップを手に、次に巡るアトラクションを考えていた。
「ヒロさん、あたし、ちょっと気になるアトラクションがあるんだけど」
「僕もだよ」
視線を合わせた二人は同時にマップの一つのアトラクションを指した。それは鏡の迷路『ゼニス・ホール』だった。
「気をつけろ、なんて言われるとなぁ……」
「余計、気になっちゃうよね」
これ以上の言葉は不要だった。二人は何も考えずに『ゼニス・ホール』に向かう。
『ゼニス・ホール』の前は列が出来ていた。今日は入場者数が限られている為、人気のアトラクションもほとんど並ばずに楽しめるものが多かった。
「ヒロさん、どうする?」
「これだけ並んでいるんだから、他のアトラクションより楽しいのかもしれない。僕は体験してみたい!」
「そうだな!待つのも楽しみの一つだぜ!」
待っている間、リズと博成はいたるところに設置されたモニタを見ていた。『ゼニス・ホール』での遊び方の説明が放送されている。
『ゼニス・ホール』はゼニスの肉体表面をイメージした鏡の迷路だ。途中、クイズなどの仕掛けをクリアしながらゴールを目指す。ゴールした時のタイムと仕掛けをクリアする事で得たポイントで参加者のランクが決まる。
「やるからには最高のAランクだぜ!」
と、リズは説明を見てやる気を出していた。二十分ほど並んでようやく二人の番になった。途中で鏡にぶつかったり、クイズのアトラクションで時間をロスしたりしながら二人は進んだ。十五分ほど探索を続けていた二人は黒いドアを見つけた。他は全て鏡で出来ているのだが、ここだけが明らかに違う。
「ヒロさん、きっとここがゴールだぜ!」
そう言ってリズが開けて中に入った。博成もそれに続く。中は、今までのように周囲を鏡に囲まれていた世界ではない。リズが開けたドアと同じように黒い壁の部屋だ。天井から室内を照らすライトの明かりだけが白い。奥に、何者かが二人いる。
「ここは広くていいな。誰かいるぞ。この迷路のボスか?」
「その問いにはこう答えましょう。イエスと」
「ボスというよりは刺客だけどね」
リズが声をかけるとその場にいた二人が答える。二人とも少年だ。片方は小柄で小動物を思わせる。白いパーカーを着ていてフードをかぶっていた。
もう一人は大柄な少年だ。髪が肩まで伸びていて、迷彩柄のシャツを着ている。
二人は自分の右手を胸の前まで持ってくる。すると、二人の手の甲が発光し、黒い模様が浮かんだ。それを見て、リズと博成は二人が何者か察する。
「リズさん、この二人は『スタンプ』だ!」
「じゃあ、敵か!」
「敵か、という問いにはこう答えましょう。イエスと」
パーカーの小柄な少年が言う。そう言った彼の前には半透明な丸い物体が浮かんでいた。
「僕達はお前達を倒しに来た。『スタンプ』Aランクのメンバーにして九人の保持者、『新生球舞』さ」
続いて迷彩柄の少年が言う。
「保持者!?それに、き、『球舞』だって……!?」
その言葉を聞いた博成が青ざめる。冷房の勢いが強いわけでもないのに、震え始めた。
「おい、ヒロさん、どうしたんだよ?確かに、今まであたし達はAランクの奴らとは戦った事ないけれど、ビビり過ぎだぜ?」
「そこにいる一ノ瀬博成さんが怯えるのも無理はないでしょう。その人は先代の『球舞』の恐ろしさを知っているんですから」
震えたまま、答えない博成の代わりにパーカーの少年が言う。
「ただ、あたし達を待ち伏せしてたって訳でもなさそうだな」
「その問いにもイエスと答えましょう。この二宮砲助(にのみやほうすけ)と」
「僕、一井(いちい)斧馬の役割はこの場所に吸い寄せられてくる保持者狩りだ」
自分達の名を名乗った二人に対して、リズは拳握って睨みつける。
「吸い寄せられてくる?どういう事だよ?」
「その問いには答えません。斧馬に任せましょう」
パーカーの少年、砲助はそう言った。
「内なる力を覚醒させた保持者は特殊な能力を得られる。僕が得た能力は『ジェイル』。デュエル・マスターズについて知っている者をこのアトラクションに吸い寄せて閉じ込める能力さ。このアトラクションに来た人間は全て僕の配下となった。『スタンプ』のメンバーとしていい仕事をしてくれるだろう」
迷彩柄の少年、斧馬が言う。
「斧馬はあなた達が来るまでに二人も邪魔な保持者を倒しました。あなた達を倒せば四人です」
「あたし達まで数に入れるなよ……!ボル太!」
『呼んだか?』
リズの左手の中指から声がする。正確には彼女がつけている指輪からだ。
銀色の龍の飾りがついたこの指輪、ボル太はリズの過去を知っている存在だ。彼女が戦う時のサポートも行っている。
「戦うから力を貸してくれ!」
『判った』
ボル太が答えた瞬間、リズの前に鎖が巻きついたデッキケースが現れる。リズが右手でそれを手に取った瞬間、鎖は弾け飛び、赤いデッキケースが姿を見せた。
「あたしのデッキ『ブレイザー』で相手をするぜ!」
「まずは君か。一ノ瀬博成と戦う前のウォーミングアップだ!」
斧馬は緑色のデッキケースを取り出す。そして、周囲のものが全て白い色に変わる。二人は準備を終えて、手札となった五枚のカードを見る。
「いや、駄目だ!」
そこで博成が叫んだ。声は震えているが、確固たる信念があった。
「リズさん、そこの君も!保持者同士で戦っちゃ駄目だ!例え、君が敵であっても聞いて欲しい!保持者同士の戦いはどちらかが拒否すれば回避できるんだから!」
博成は立ち上がると対峙していたリズと斧馬の間に入った。まずは斧馬を見る。
「今からでもいい!考え直してくれ!」
「斧馬ではないですが、代わりに答えましょう。ノーと」
「そういう事ですよ、元アジアチャンプ。戦いの邪魔はしないで下さい」
冷たい答えを聞いても博成は諦めない。今度はリズを見た。
「リズさん!ここは駄目だ!戦うのをやめて一度、逃げよう!」
「ヒロさん、そこをどいてくれよ。止めないでくれ。あたしは負けないから」
「いや、止めるよ。君が負けると思っているからじゃない。保持者同士の戦いで負けたら、敗者はデュエル・マスターズに関する記憶を失い、デュエル・マスターズカードに恐怖を覚えて、二度とデュエルが出来なくなってしまう」
その言葉を聞いたリズは息を飲んだ。何も言い返さずに博成を見る。
「だから、どっちが負けるのも僕は嫌なんだ。デュエルを知っている人がいなくなるのは嫌なんだ。戦わずに済ませる方法を探したい」
「ヒロさんは優しいんだな」
博成の言葉を聞いていたリズは彼に微笑みかける。それを見た博成は自分の想いが通じたと思って彼女に一歩近づいた。その瞬間、リズは《一撃奪取 トップギア》を召喚した。
「リズさん……!?」
「今すぐそこをどいてくれ。そこは危ない。もうデュエルは始まってるんだ」
「そんな……」
博成は目の前の現実にショックを受けながらその場から動く。力なく歩き、リズの背後まで移動した。
「ごめんよ、ヒロさん。でも、これはチャンスかもしれないんだ。あたしが記憶をなくした事は店長から聞いて知ってるよな?」
「うん……」
「もしかしたら、その手掛かりが見つかるかもしれないんだ。何故か、あたしはボル太がいないとデュエルができない。記憶もない。一回、保持者同士のデュエルで負けたからかもしれじゃないじゃないか!」
そう言ってリズは博成を見た。彼女は笑っている。
「もしかしたら、こいつらと戦ったら記憶が戻るかもしれない。勝ったら記憶の手掛かりが見つかるかもしれない。そう思ったら戦わずにいられない。判るだろ?」
「判ったよ。僕はこの戦いを止めない」
博成は自分の体の震えが消えている事に気付いた。リズの笑顔を見た時だ。あの時、自分の心の中にあった氷のような恐怖が溶けて行った。
「勝つ?バカバカしい!」
斧馬は《青銅の面 ナム=ダエッド》を召喚し、効果でマナを増やした。この時点で互いのクリーチャーは一体ずつだ。
「砲助、相手のランクはどうだ?」
「Bランク。それをちょっと超えている程度でしょう。Aランクには届きません」
砲助は目の前にある半透明な円形の物体を見ながら言う。
「それ使って品定めか。嫌な奴だな」
続いてリズは《ゴーゴー・ジゴッチ》を召喚した。効果でドラゴンのカードを手札に加える。《トップギア》で攻撃はしなかった。
「そういう感情も記憶もすぐに消えるさ。そして、目障りなクリーチャーには消えてもらおうかな!」
斧馬が緑色のドラゴン《有毒類 ラグマトックス》を召喚する。その瞬間、《ナム=ダエッド》と《ゴーゴー・ジゴッチ》の頭上から巨大な葉が何枚も降って来た。葉は二体を覆い隠した後、どこかに飛んでいく。そこには二体のクリーチャーの姿はなかった。
「《有毒類 ラグマトックス》が出れば、それぞれのバトルゾーンからクリーチャーを一体ずつ消せるのさ。僕は用済みの《ナム=ダエッド》にした。君は《トップギア》が大事みたいだね」
「ああ、そうさ。コスト減らして強いクリーチャーを出したいんだよ。こうやってな!」
リズはさっき手札に加えていたドラゴンを召喚する。両肩の槍で武装した《メガ・スピア・ドラゴン》だ。《メガ・スピア・ドラゴン》は登場と同時にかけぬけて、斧馬のシールドに突っ込む。五枚の内、二枚のシールドが砕け散った。
「先制攻撃だぜ!Aランクとかユーチューブとか言っても対したことないな!」
「ユーチューブではなく『新生球舞』だと訂正しておきましょう。ね・お・きゅ・う・ぶ、です」
「それにこのくらいで調子に乗ってもらっちゃ困るな。君のターンはこれで終わりさ」
斧馬が言った瞬間、コンクリートの床を突き破って青に近い緑色のドラゴンが飛び出した。そのドラゴンが《トップギア》に手を伸ばした瞬間、《トップギア》は床に飲みこまれてしまう。
「何が起きたんだ!」
「僕のシールド・トリガークリーチャー《葉嵐類 ブルトラプス》の力さ。出た時、相手はアンタップしたクリーチャー一体をマナ送りにしなければならなくなる。さあて……」
斧馬がカードを引いた時、彼の周囲が緑色の光を発する。それを見たリズと博成はただならぬ気配を感じた。
「君の終わりが近づいてきたよ。《龍覇 サソリス》を召喚!」
緑色の光と共に、斧馬の場に新たなクリーチャーが現れる。仮面をかぶった巨大なリスのクリーチャー《龍覇 サソリス》だ。
「なんだよ。驚いたけれど、パワー4000のクリーチャーじゃないか。それじゃ、あたしの《メガ・スピア・ドラゴン》は倒せないぜ」
「パワーだけを見てもらっては困るね。《サソリス》の真の力を見せてあげるよ!やれ!」
斧馬の命令を受け、サソリスはコンクリートの床に右手を叩きつけた。右手は床を突き破り、その中にあるものをつかむ。高らかに挙げた右手にはツタが巻き付いたハンマーが握られている。
「《サソリス》は場に出た瞬間、ドラグハートを装備できる。装備させたのは《始原塊 ジュダイナ》だ。僕のターン開始時、ドラゴンが三体いれば《ジュダイナ》は真の力を開放する!」
「三体かよ……」
『リズ、気をつけろ。奴の場にいるクリーチャー《ラグマトックス》と《ブルトラプス》はドラゴンだ。あと一体ドラゴンが揃ったら三体が揃う』
「判ってるぜ。この時の為に少しずつドラゴンを増やしていたってわけか」
リズはカードを引いてチェックする。残念ながらこの状況を打破できるカードではなかった。
「仕方ない。《ゴーゴー・ジゴッチ》でドラゴンを手札に!さらに《トップギア》を召喚!」
クリーチャーを並べたリズは《メガ・スピア・ドラゴン》を見た。リズはこの龍の力を信じている。
「これで数では互角!三体目のドラゴンが出ても、そっちのターンにならなきゃいい!そうなる前にケリをつけてやるぜ!」
《メガ・スピア・ドラゴン》が二回目の攻撃を仕掛ける。W・ブレイクが成功して、二枚のシールドが砕けて行った。
「あと一枚だ!」
リズがそう言った瞬間、彼女の前にいた《ゴーゴー・ジゴッチ》が床に飲みこまれていく。
『リズ、やられたぞ!』
ボル太の声を聞いて、リズは状況を察した。ブレイクしたシールドから《ブルトラプス》が出たのだ。
「これで三体揃った。そして、僕のターンだ!」
《サソリス》が頭上に《ジュダイナ》を放り投げる。すると、緑色の光と共にツタがほどけ、形を変えていく。形を変えながら、それは少しずつ巨大化していく。最終的にはハンマーを握った龍となった。
「僕の切り札《古代王 ザウルピオ》だ。これで君は僕には勝てない」
姿を現した《ザウルピオ》を見ながら斧馬は右手を伸ばす。そして、宣言した。
「やれ!《ザウルピオ》!T・ブレイクだ!」
《ザウルピオ》が両手で握ったハンマーをリズのシールドに叩きつける。その衝撃で三枚のシールドが一撃で破られてしまった。
「続け!残り四体もいるんだ!僕が負けるはずがない!」
《サソリス》《ラグマトックス》がシールドに向かって飛び込む。残っていた二枚もシールドも破られてしまった。
「これで僕の勝ちだ!」
斧馬が叫んだ瞬間、二体の《ブルトラプス》が倒れた。見ると、その腹には、拳の跡のようなものが見える。
「残念だったな。シールド・トリガーだぜ」
斧馬が見ると、リズの場に見慣れない二体のドラゴンが並んでいるのが見えた。登場時に相手クリーチャーと強制バトルを行う《熱血龍 バトクロス・バトル》だ。
「このターンでとどめは無理か。だけど、《バトクロス・バトル》が場に留まれるのは一瞬だ」
斧馬の言う通りだった。相手のターン中に出た《バトクロス・バトル》はターンの終わりに山札の下に置かれる。リズの場に出た二体も赤い光を出して消えてしまった。
「だけど、あんたのシールドは一枚であたしのクリーチャーは二体だ。これで勝てるぜ」
「その答えはノーです」
自信を持って言ったリズの言葉を砲助が否定した。
「斧馬の切り札《ザウルピオ》は自分のシールドが一枚もない時、プレイヤーへの攻撃を禁止する力を持ちます」
「そして、僕の《ザウルピオ》のパワーは12000ある。君のクリーチャーで倒せるかな?」
「無理でしょう。今まで斧馬に挑戦した者も、今日斧馬と戦った保持者も《ザウルピオ》の前に敗れましたからね」
斧馬と砲助、二人の言葉がリズと博成の耳に届く。リズは何も言わず山札の上に手を置いた。
「今のあたしのカードじゃ《ザウルピオ》は倒せないな」
「やっぱり無理か」
「だから、引く事にした」
リズは山札の上のカードを指先でつまみ、頭上に持ち上げる。それを見た時「よし」と言った。
「この状況を逆転できるはずがない。砲助、君もそう思うだろう?」
斧馬は馬鹿にしたような口調で言う。だが、砲助は何も言わない。
「砲助?」
「BからAに上がっています……!」
透明な物体を覗いていた砲助の口調が緊張したものに変わる。それを聞いて斧馬は焦り、息を飲む。
「Aになった……?君の能力『レンズ』に不調でもあったんじゃないのか!?デュエル中に強化される事なんてありえない!」
「ありえないという問いにはこう答えましょう。ノーと。でも、僕も驚いています。『レンズ』の能力に異常はありません!ですが、BからAに上がっているんです!まだ上昇しています。これはAを超えて……!」
「黙ってろ!砲助!」
砲助との会話を諦めた斧馬はリズを見る。一分にも満たないわずかな時間で彼の精神的優位は崩れようとしていた。
「見せてみろよ!僕の《ザウルピオ》は止められないけどな!」
「いや、これで終わりにしてやるぜ。《ザウルピオ》もあんたのクリーチャーも、あんたの思い上がりもな!」
リズが《トップギア》に一枚のカードを投げる。彼女が投げた赤い光に包まれて《トップギア》は姿を変えて行った。大きく、強く、たくましい姿。赤いシルエットとなったそれは宙に浮く。そして、赤い光が弾けてそのドラゴンは姿を見せる。
赤い体に白い鎧を纏った龍。金色に近い色の髪、青いゴーグル。
「不利でも勝てる。いや、不利だからこそ勝てる!進化!《爆ぜる革命 ドラッケンA》!!」
《ドラッケンA》は両肩のガトリングガンを斧馬のクリーチャーに向ける。そして、間髪入れずに掃射した。降り注ぐ弾丸の雨から《ザウルピオ》達は身を守る術がない。あれだけいたクリーチャーは《ドラッケンA》の一撃で消えてしまった。
「《ドラッケンA》は登場時、シールドが二枚以下なら相手のパワー13000以下のクリーチャーを全て破壊できる。あんたの切り札の《ザウルピオ》はパワー12000だったよな?」
斧馬も砲助もそれに答えない。信じられない、と言った顔でその場を見ていた。
『リズ、お前の勝ちだ。やれ』
「言われなくても判るぜ。《メガ・スピア・ドラゴン》で攻撃!」
《メガ・スピア・ドラゴン》の突進で斧馬の最後のシールドが破られる。それはシールド・トリガーではなかった。
「あ……、ああ……!」
斧馬は怯えた表情で《ドラッケンA》を見ている。そんな彼に向けてガトリングガンが掃射された。
「うわーっ!!」
彼は恐怖から声を絞り出した。その声もガトリングの音に消される。
「よし!」
リズが言った瞬間、彼女のクリーチャーは消えた。決着がついたのだ。
周囲が色を取り戻したのを見て、リズは斧馬に近づいた。彼はしゃがみこんで頭を抱えている。そんな彼にリズは手を伸ばした。
「立てるか?」
彼女の声を聞いた瞬間、斧馬は顔を上げる。
「あたしの事、覚えているか。デュエル、覚えているよな?」
リズは自分のデッキ『ブレイザー』を斧馬に見せる。それを見ながら斧馬は頷き、はっとする。
「君、僕にとどめを刺さなかったのか!?」
「ああ、そうだぜ」
「馬鹿な真似を」
そう吐き捨てて斧馬は立ち上がる。そして、砲助に近寄ると「行くぞ」と言って奥にあるドアを開けた。砲助もそれに続く。
「僕の能力『ジェイル』は解除しておいた。もう出られるよ」
それだけ言い残して二人は去って行った。
『わざと外したのか』
ボル太が淡々とした声で聞く。いつもと変わらない調子だが、怒っているのがリズには判った。
「ああ、そうだぜ。これで、ヒロさんの希望通りになった」
「僕の?」
デュエルを見守っていた博成はここで声を出した。
「ああ。戦うなっていうのは無理だったけれど、どっちも記憶を失わなかったぜ」
そう言ってリズは博成に向けて笑う。彼女の元気な笑顔を見て、博成も笑った。
「そこまでやれるとは思わなかったよ」
博成は右手を伸ばした。リズはそれを握る。
「Aランクが出て来たから、僕らの戦いはもっと過酷になる。亀井君達にも相談してみよう」
「そうだな。だけど、安心していいぜ。全員、あたしが倒してやるからな!」
黒い室内にリズの声が響いた。それを聞いた博成は、彼女ならそれを現実にできると感じていた。

次回につづく

次回予告
私、一ノ瀬博成はカードゲーム雑誌の記者だ。
斧馬の敗北を知った新生球舞は黙っていなかった。彼らのリーダー、九鬼拳慈は自ら出撃する事を決める。彼の標的は亀井幸平だった。
次回『第五話 真っ赤な閃光』
彼が求める楽しい殺し合い。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (チェックを入れると管理人だけに表示できます)
Powered by Ninja Blog    template by Temp* factory    icon by MiniaureType

忍者ブログ [PR]