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デュエル・マスターズ初心者向けを意識した記事を書いています。
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『TOKYO決闘記』

私、一ノ瀬博成(いちのせひろなり)は立法学園高校の二年生で、新聞委員会に所属している。ある土曜日の放課後、私は友人、赤城勇騎(あかぎゆうき)の調べ物に同行した。そこに現れたのは、白いスーツの青年、金城豪人(かねしろごうと)だった。『ネオウエーブ』の保持者である彼は、勇騎が佐倉美和(さくらみわ)という女性を誘拐したとして、デュエルを挑む。私の目の前で保持者同士のデュエルが始まろうとしていた。
20XX年 一ノ瀬博成

第六話 激突


博成は、保持者どうしが対峙するのを見るのが初めてだった。勇騎やヴェルデがクリーチャーに憑依された人間を倒すのは見てきた。だが、それとは違う緊張感が空気中に溶けている。
「さて……それでは僕から行くぞ!」
豪人がマナゾーンにカードをチャージした瞬間、博成は走って二人の間に立った。両手を広げて二人に対して立ちふさがる。
「こんな事、してちゃ駄目だ!」
「一ノ瀬、何のつもりだ」
博成と勇騎の目が合う。勇騎の目はいつもと同じで冷静さを持っている。だから、説得すれば話が通じるはず。博成は自分の考えをぶつける事にした。
「保持者じゃないと、クリーチャーに憑かれた人達は助けられないんだ。僕がどんなに強くなりたいと願ったって、そんな力は与えられない」
「俺はボランティアでやっているわけじゃない。だから、俺は好きなようにやる」
「結城君は、誰かを誘拐してまで保持者を倒したりしない。僕はそれを知っている」
博成は静かに、だが、この世界の全てに響く声で言った。豪人はその言葉が真実である事を感じ取った。
「やれやれ……。これじゃ、戦いを続ける方が悪役みたいじゃないか」
豪人は『ネオウエーブ』を開くと、すでにデュエルができる状態になっていたカードが自らケースの中へと入っていく。保持者の戦いは中断されたのだ。
「ふん……。熱しやすく冷めやすい奴だ」
勇騎も同じように『プロミネンス』にカードをしまった。世界も元の世界へと戻っていく。
「元々、俺はこんな奴を倒すつもりはなかった。ただ、熱くなりすぎているからその熱を冷ましてやろうと思っただけだ」
「でも、勇騎君。こんな真のデュエルをやったら、負けた方は死んじゃうんじゃないの?」
「いいや、それはないよ」
博成の質問に、後ろから来た豪人が答える。
「僕達がやっているデュエルでは、負けても死ぬ事はない。だが、寿命が削られる。寿命が削られる量は、勝利した者と敗北した者の実力の差で変わってくる。状況によっては、死ぬ事もあるかもしれないね」
『死』という単語が入っているのに、豪人は気楽な口調で話している。そんな事など、どうでもいいと言うように。
「それよりも、この保持者が美和を誘拐したんじゃないとしたら、美和は誰に誘拐されたんだい?」
「それは、俺が調べている事と関係があるだろう」
勇騎は再び、パソコンの前に座って何かを調べ始めた。博成と豪人もその画面を見た。
「実は、朝から日芽も行方不明になっている。同じように誘拐された可能性が高い」
「それをどうして早く言わないの!」
博成は思わず大きな声を出したが、それを知ったところで、出来る事など高が知れている。勇騎が何も言わないのも当然の事だった。
その時、軽快な着信音と共に勇騎の携帯が鳴った。彼は片手でパソコンの操作をしながら、電話を取る。
「日芽か?」
勇騎の発した一言に、博成は反応する。
『うん、そうだよ、お兄ちゃん。捕まっちゃったみたい……』
勇騎は博成と豪人にも聞こえやすいように通話音量を最大まで上げた。日芽の高い声はそうしなくても充分聞こえる。
「今、どこにいる?場所は判るか?」
『判らないよ。でも、何だかデパートみたいな場所だよ。何も置いてないけれど……』
「何もない……?商品がないという事か?」
『うん、そう。棚とかは置いてあるよ。あ、あと隣に着物を着た女の子がいる』
「美和かな」
豪人がすかさず反応する。今時、東京で着物を着た少女など何人もいないだろう。成人式は二ヶ月も先だ。
「そうか。何か他に手がかりはあるか?」
勇騎が聞いたところで、電話は急に切れた。どうやら、会話の開始と終了は日芽の意思で決められる事ではないらしい。
「どうするの?これだけじゃ、場所は判らないんじゃ……」
博成が不安そうな声を出すが、勇騎は余裕だった。今の手がかりで正解に至ったのだ。
「デパートみたいな場所……。商品のない棚……。小さな音だったので気付かなかったかもしれないが、子供向けのゲームセンターのような騒がしい音が聞こえた」
勇騎が音を大きくしたのは、小さな音を聞き逃さないという理由もあったのだ。条件を基にして、勇騎は検索対象を絞り込む。
「日芽が消えたのは今朝、通学途中だ。そこから移動できる距離と日芽を隠せるような場所。そして、今の条件に見合う場所はここだ」
勇騎はとあるホームページを検索した。そこには、とある建物の地図が描かれている。
「なるほど。そこなら、入ってくる者はいないね」
今までほとんど黙っていた豪人も納得する。
「よし、それならば早く移動しよう。美和を助けてさっさと帰ろうと思っていたから、外にタクシーを待たせている」
「助かる。一ノ瀬、お前も来るか?」
博成は、自分では勇騎と豪人の足手まといになるかもしれないと思った。だが、それでも勇騎についていきたい。
「僕も行く。君の戦いを見たい」
博成はそう言って、二人についていった。

暗い倉庫。色々なコンテナの隅にヴェルデはいた。
あの後、肉体はゆっくりと元に戻っていった。だが、彼の体は徐々に蝕まれている。
「時間がないか……」
ヴェルデは自分の左腕を見る。勇騎の前で獣の姿になった時は左手だけを覆っていた金色の鎧が、今では彼の左手首まで覆っている。少しずつ、彼の体を侵食しているのだ。
この鎧が彼の全身を覆った時、彼がどうなるのか判らない。だが、本能的に危険である事は判る。
「誰だ……!」
ヴェルデは倉庫の一角を見る。そこから、微かな物音が聞こえたのだ。
「くっくくく……けけけけ!やっぱり耳がいいよなァ、失敗作のくせによォ!」
その影から出てきたのは、勇騎やヴェルデと同じ年頃の少年だった。
その顔つきは勇騎と瓜二つだが、悪意を秘めたような表情をしている。髪は黒髪で、顔の右半分だけは真っ赤に染めた長い前髪で隠れていた。異様なのは、髪型だけではない。服装は、ジーンズに長いベージュのコートだけだ。体のほとんどが包帯で隠れていた。重傷の怪我人のようにも見えるが、彼は平気である。
「貴様……」
ヴェルデもその顔に見覚えがあった。勇騎とは違うこの存在。その危険性を彼は知っている。
「失敗作……てめぇ、奴とデュエルしたな?言っとくけど、奴をデュエルで殺すのはこの世界でただ一人、俺だけだ。ザコはそこで寝てろ!」
包帯の少年はそう言うと、高らかに笑う。その笑い方がヴェルデには不快だった。
「あぁ……すがすがしいぜ。やっと、ゼロ号を殺せる。やっとだ!待ちくたびれたぜェ……」
包帯の少年は黒く輝くデッキケースを取り出す。ヴェルデはそれが『グランドクロス』や『プロミネンス』と同じように選ばれたデッキである事を悟った。
「おい、失敗作。俺の名を覚えとけ。この世界での俺の名は墨川一夜(すみかわかずや)だ」
一夜は黒いデッキを持ったまま、ヴェルデに背を向けて歩き始めた。
「あいつも……俺達と同じ保持者なのか」

「ふぅ……」
日芽が勇騎に電話をかけてから約十分後……。今朝、自分に起きた出来事を思い出していた。
お気に入りのお菓子が切れていた事を思い出した日芽は、勇騎にその事を告げて通学途中にコンビニに寄る事にした。勇騎は「先に行く」と言って日芽を置いていった。いつもの事である。
その後、コンビニから出てから別の高校の男子生徒にアイスをもらったのだ。日芽はアイスが好きなので、おかしいとも思わずにそれをもらって食べた。その時に気を失って、気がついたらここにいたのである。
今の日芽は、椅子にビニール紐で縛り付けられている。固い素材なので、無理に外す事は難しい。外そうとしたら、端が肌に食い込んで痛い思いをするだろう。
隣を見ると、そこにも日芽と同じように捕まった少女がいた。唇を噛んだまま、一言もしゃべろうとしない。非常に厳しい表情をしていた。
周りはデパートのような内装だ。商品を並べるような棚は置いてあるが、肝心の商品が一つも置いていない。棚には透明なビニールシートがかけられて埃で汚れないようになっている。
「あのヒントで保持者が来るかな?」
詰襟姿の少年が、腰に手を当てて近くにいたパートナーの少女に聞く。日芽は思い出した。彼が日芽にアイスを渡した少年である。
この制服は立法学園と同じように品川にある別の高校の制服だ。パートナーの少女が着ている服もその高校の制服だ。
「さあね。場所が判っても、もう一人の保持者と戦って今頃共倒れになっているかもしれないわ。確か……金城豪人と言ったわね、あなたの連れの名前」
ブレザーを着た少女は美和を見る。美和は何も言わない。
「嫌われちゃったね、姉さん」
詰襟姿の少年の発言を聞く限りでは、この二人は姉弟のようだ。二人でクリーチャーに憑依されているらしい。
「手間のかかる作戦だよな、ホント。何のメリットがあるんだよ、これに。時間もかかるしな」
その二人とは別に、一人の青年が歩いてくる。普通のスーツを着た二十歳前後の青年だが、おかしい部分が多すぎる。
まず、全身に散りばめられた時計だ。両腕に腕時計をはめているし、首からは懐中時計を下げている。さらに、右手に持った携帯電話でも時間を確認しているようだ。左手はジャケットのポケットに入れていて、そこからはストップウォッチを取り出した。
「あの野郎、待ち合わせの時間に遅れてやがる。時間を守れない奴とは一緒に仕事をしないのが俺のポリシーなんだが……。あいつに言われなければ二階堂(にかいどう)なんかとコンビ組まなかったのによ!」
「ヒステリックですね、一本杉(いっぽんすぎ)先輩」
ブレザー姿の姉が長い髪をいじりながら、スーツの青年に言う。一本杉と呼ばれた男よりも少女の方が落ち着いているようだった。
「悪いな、水科(みずしな)。俺、この後の予定がつまっているからな。無駄な時間は使えない」
「無駄……ですか。少なくとも、僕は無駄とは思えないですよ」
水科の弟が言う。彼も水科姉と同じで落ち着いた性格のようだ。水科弟は、一本杉を見ていない。
何を見ているのか疑問を感じた一本杉が視線を追うと、その先に三人の男の姿が見えた。勇騎と博成、そして豪人の三人である。
「豪人様!」
そこで初めて美和が口を開く。彼女の顔は感激に満ちていた。
「待たせたね、美和。今から、助けてあげよう。予定とは少し違ってしまったけれど、僕と一緒に夕食を食べよう」
「はい、豪人様……。あの……、捕まってしまって申し訳ありません」
前半は豪人の言葉に目を輝かせながら、後半は自らの現状に対してすまなそうに美和が言う。
「何も悪くないよ、美和。君は何も悪くない。そこにいる三人を倒せばいいだけの話だからね」
豪人は、『ネオウエーブ』を取り出して水科姉弟と一本杉を睨みつける。
「何だか、すごいプレッシャーだね、勇騎君。金城さん、一人で三人ともやっつけちゃうんじゃないの?」
博成は、豪人の気迫に驚きながら勇騎に話しかける。それぐらい、彼の気迫が頼もしく見えたのだ。
「いや……敵は三人じゃない。四人だ」
「え?」
博成が勇騎の言葉に驚いて三人を見ると、そこに一人の男が歩いてきた。
非常に背が高く、細身の男だ。勇騎や博成よりも十歳ほど年上に見える。男性なのに髪は非常に長く、黒く綺麗であった。細い眼鏡をかけて、その奥の同じように細い瞳が勇騎達を見ている。
「二階堂!お前、十四分三十八秒の遅刻だぞ!」
「悪いな……」
つめよる一本杉を見ずに、二階堂と呼ばれた男は答える。彼は一歩ずつ勇騎達へと近づく。
「何故、ここが判ったんだ?……答えたくなければ答えなくてもいい。水科姉弟が少しだけ与えたヒントだけで問題を解かれてしまったものだから、気になってしまったんだよ。今回の失敗を活かして以降は同じ失敗をしないようにしたいからね」
「余計な事をしゃべるのは好きじゃない。だが、貴様らがくだらない策を考えても無駄だという事を教えるために解説してやる」
「いいの?」
博成は勇騎に聞く。敵に手の内を明かすような事をするのは危険だと思ったのだ。だが、博成もどうして勇騎が理由を知りたい。
「日芽が連れ去られたのは今朝だ。さらに、金城豪人の連れも同じように誘拐された。金城の持っていた手紙から、何物かが俺達の同士討ちを狙っている事くらい判る。そして、日芽と金城の連れを誘拐した犯人は同士討ちを狙うその何者かである、つまり、同一犯だと考えた。その時点で、二人以上の人間を隠せて品川から遠くない場所を探した。そこへ、日芽の電話が来た。『デパートのような場所』『商品のない棚』そして『微かに聞こえたゲームセンターの音』この三つがこの場所を特定する手がかりとなった」
博成もここに来る途中で子供向けのゲームセンターがあるのに気がついた。ここでもこの音が聞こえる。
「この近辺のデパートで定休日になっているものや、閉店になっているものはない。俺はデパートなどの在庫が置かれている部屋などの可能性も考えたが、そしたら、段ボールなどに入った商品が目に付いているはずだ。検索している情報を見ていた俺はピンと来たよ。まだ開店してない場所ならばどうだろう、って……」
水科姉弟と一本杉が驚いた顔をする。
ここは、まだ開店していないショッピングセンターだ。ゲームセンターは機会の点検のために騒がしい音がしているが、それだけで場所を特定できるとは。
「開店前なのに、情報は色々流れているものだ。これは、このショッピングセンターの公式ホームページを見ている時に見つけた店内の地図だ。迷わずここに辿り着けた……」
勇騎はそこで初めて怒りに満ちた視線を敵に向ける。そんな中で、二階堂だけが余裕を保った表情をしていた。
「素晴らしいな、保持者。今回のくだらない悪戯は私が考えたものだ。君達を同士討ちさせようという思いも少しはあったが、成功しないと思っていたよ。君達には、絶望して欲しかったんだがね」
そう言った二階堂は、勇騎達に背を向ける。
「一本杉、ここは水科達に任せて私達は行くとしよう。六儀(りくぎ)が今後の活動に関して話したい事があるらしい」
「判ったよ。次からそういう事を言うのはもっと早くして欲しいもんだな」
二階堂と一本杉は勇騎達に背を向けて歩き出して行く。
「なあ、二階堂。あの保持者、倒さなくてもいいのか?」
小さな声で一本杉が聞く。同じように二階堂も答えた。
「私と戦うには、まだ絶望が足りない。そう感じないか?」
「なるほど、お前らしい答えだ」
意味の判らない答えだが、長い付き合いの一本杉は彼の言いたい事を察した。二人は別の目的のために歩いていった。

「日芽!お前、アイスに釣られたな?」
「え!?そ、そそ……そんな事ないよぉ!いくらわたしがアイス好きだからって……」
「顔に書いてあるぞ」
「ごめんなさーい!だって、アイスだよ?アイス」
「知らない人からもらった物を食べるなと言っただろう」
「でも、アイスくれたんだよ?アイスくれる人はいい人だよね?」
二階堂と一本杉が出て行ってから、勇騎による日芽の説教が始まっていた。緊迫していたムードぶち壊しである。
「やれやれ……。説教は後だ。今は、デュエルが先のようだな」
勇騎の前に水科弟が、豪人の前に水科姉が立ちふさがった。
「あの二階堂十三階(じゅうさんかい)がマークするなんて……。君は何をやったんだ?」
「さあな。とりあえず、黙っていろ。くだらない好奇心はお前を殺すぞ」
勇騎の『プロミネンス』が輝き、水科弟のデッキが灰色に光った時、世界が変わって彼らを戦いの場へ隔離する。
同じように、豪人と水科姉の世界も変わっていった。
「ふぅん、さっきは怒りでまともに顔も見えなかったけれど、君って結構かわいいね」
「くだらないおしゃべりをする男は嫌い。死んでもらうわよ、保持者」
水科姉は、慣れた手つきでカードをマナに置く。
「美和には悪いけど、ちょっと心が動いたな。そのツンツンしたところなんかいいね」
軽口を叩きながら、豪人もマナをチャージする。
「行くよ!『白金の守護者ラ・ブール』!」
1ターン目からクリーチャーを召喚する豪人。相手クリーチャーもいない状況でブロッカーを召喚するという行為に、水科姉は驚いた。
「正気?召喚できるから召喚するなんて、素人の戦い方よ。保持者ってその程度の実力なの?」
「まあ見てなって。この世には二種類の人間がいる。口だけの人間と有言実行の人間。僕がどちらの人間なのかは、デュエルが終わる頃に判るはずだ」
「そうね。口だけの人間だという事を証明してあげる!」
水科姉はマナをチャージしただけでターンを終えてしまった。早くから行動しないデッキのようだ。
「おっと、そうはいかない。『エマージェンシー・タイフーン』で手札を引かせてもらうよ」
豪人の手札が一時的に増える。だが、『エマージェンシー・タイフーン』の効果で一枚捨てる事になった。
「勝つのは、私。それは決まっている!」
豪人の手札が一枚弾け飛ぶ。
「ふーん、『クローン・バイス』か。見かけでは気付かなかったけれど、お転婆なお嬢さんだ」
手札を破壊されて、それでも豪人は余裕である。自分の勝利を信じて疑わないからだ。

「『無頼勇騎ゴンタ』を召喚!さあ、全力で倒してあげよう!」
水科弟は2ターン目に軽量かつパワフルな『ゴンタ』を召喚してきた。
「全力か……。今までの奴よりも少しは楽しめるんだろうな?」
すでに、『ポップ・ルピン』を召喚していた勇騎は『コッコ・ルピア』を召喚してターンを終了する。
「ドラゴンデッキか……。そんな遅いデッキで、僕に勝てるかな?」
水科弟は、『ブレイブハート・ドラグーン』を召喚してシールドを攻撃する。さらに、ゴンタの攻撃も決まって勇騎のシールドは早くも残り三枚になった。
「遅いかどうか、試してみるか?」
勇騎が一枚のカードを出した瞬間、強い風が吹いて水科弟のゴンタが消え去る。勇騎の場に、一体のドラゴンが出現していた。
「それは……!」
「『フレミングジェット・ドラゴン』。スピードアタッカーだ。俺は、『ポップ・ルピン』の能力でこいつをアンタップして『ブレイブハート』を攻撃する!」
攻撃後の隙をつかれて、『ブレイブハート・ドラグーン』が倒される。
「なるほど……。簡単には倒されないってわけか。ならば、『フォーチュン・ボール』で手札を補充するまでだ!」
速攻をした後の手札補充。非常に綺麗な流れだ。今まで以上の敵の出現に、勇騎は気を引き締めた。

「『パルピィ・ゴービー』を召喚!」
水科姉と豪人のデュエルは後半に突入していた。呪文ばかりが目立つ水科姉のデッキの中で、出てきたクリーチャーは『パルピィ・ゴービー』と『ストーム・クロウラー』だけだ。
一方、豪人もブロッカーを並べ続けている。『白金の守護者ラ・ブール』2体、『光波の守護者テルス・ルース』1体、『渓谷の守護者クレスタ』2体だ。
「山札操作か……。じゃ、僕もそろそろ仕込んでいたシステムを発動しようかな」
豪人はマナをタップして一体のクリーチャーを召喚する。それは『神託の守護者ミント・シュバール』だった。
「『ミント・シュバール』は、山札を三枚めくって出たガーディアンの数だけ呪文を墓地から回収できる。僕がめくって出したガーディアンは二体」
「つまり、二枚回収できるって事でしょう?それに何の意味が……」
「判らないかな。君が『クローン・バイス』で墓地送りにした僕の切り札がここで手札に戻ってくるのさ」
水科姉の眉が動く。ならば、もう一度手札を破壊すればいいだけの話だ。だが、今の手札に手札破壊のカードはない。それに、山札を操作した今、次に引けるカードが手札破壊でない事も判る。
「もう一体『ミント・シュバール』を召喚。二体ヒット!二枚回収するよ」
このターンだけで、四枚の呪文が豪人の手札に入った。心配はいらない、と水科姉は自分に言い聞かせる。
手札破壊がなくても、次に引けるカードは水科姉の切り札だ。このカードで攻撃するだけでいい。それだけで、相手の場を壊滅させる事ができる。
「何枚呪文を回収しても無駄よ。『蒼神龍スペル・グレートブルー』召喚!」
水科姉は自分の切り札を出して豪人を威圧する。次のターンに山札の上に仕込んでいた『封魔アドラク』を召喚してマナに仕込んだ呪文のカードを山札の上に移動。『スペル・グレートブルー』の効果でその呪文を使い、豪人の場にダメージを与える。何一つ問題はない。
「ふぅん、『スペル・グレートブルー』で攻撃した時に『パルピィ・ゴービー』で仕込んだ呪文を出すかな?いや、それじゃ変化する状況に対応できない。とすると、マナに置いた呪文を使うために、君は『封魔アドラク』を召喚する」
「そんなっ……!」
目の前の変な格好の男に自分の戦略が完全に読まれていた。だとしたら、今は非常に危険である。
「当たり前の事だけど、増えた手札はマナにもできる。さてと、そろそろ回収した呪文を使おうかな。まず、一枚目。『スパイラル・ゲート』」
『スペル・グレートブルー』が水科姉の手札に戻される。だが、これならばまだ建て直しができる。
「何のつもり?『スパイラル・ゲート』ごときが切り札?」
「いや、『スペル・グレートブルー』が邪魔だったからどいてもらっただけさ。本当の切り札は君の積み上げた仕込みを無駄にするこいつだよ」
豪人は笑っている。彼は、自分が優位に立った状態で、常にこのデュエルを笑いながら行っていた。
「じゃ、行くよ。『ハイドロ・ハリケーン』!」
水科姉のマナが濁流に飲まれていく。ただの一枚もそこには残っていない。
「出せる時にブロッカーを出したのも、このためさ。可能な限り多くのクリーチャーを出して、できるだけ多くのマナを早く使えなくする。これが僕の切り札を使った戦術さ」
もう勝ったかのような顔で語り出す豪人。確かに、水科姉のマナはない。だが、豪人の場にはプレイヤーを攻撃できるクリーチャーはいないのだ。
「金城豪人。まだデュエルは終わっていないわ。余裕の解説をするのは勝ってからにしなさい!」
「了解。勝てばいいんだよね?」
マナをチャージしてターンを終えた水科姉に豪人が微笑みかける。敵だというのに、思わず心を許してしまいそうな隙だらけの笑みだ。
「まずは『テルス・ルース』を『ラルバ・ギア』に進化。これで君のブロッカーは全てタップされる。そして、二枚目の切り札、『ダイヤモンド・カッター』だ!」
これによって、豪人のガーディアンは全て水科姉を攻撃可能になった。飛行機のようなガーディアンが、電光石火の速さでシールドを破っていく。五枚あったシールドは全て割られてしまった。
「残念。シールドの中身までは仕込めなかったみたいだね。今度会った時に僕の事覚えていたら、デートしてね!」
『ラ・ブール』が水科姉に特攻した。その直後、彼女から抜け出た黒い塊を豪人が空白のカード『ブランク』を使って吸収する。
「やれやれ……。格好良すぎるってのも、考え物かな」
軽口を叩いたまま、豪人は『ネオウエーブ』をしまう。最後の最後まで、彼は余裕を崩さなかったのだ。

「『無双竜騎ドルザーク』を召喚!」
勇騎と水科弟のデュエルも終わろうとしていた。
勇騎のシールドは一枚。場には、『ポップ・ルピン』と『ドルザーク』が一体。
水科弟の場にクリーチャーはいない。だが、シールドは無傷の五枚だ。
「無駄だ。僕のデッキの長所は速さだけじゃない。中盤以降も戦える安定性も兼ね備えた完成度の高さが僕のデッキの長所だ!」
水科弟は『ストリーミング・チューター』を使って手札を補充する。そのカードの中には、三枚ものスピードアタッカーが見えた。
「さあ、次の僕のターンで終わりだ。保持者って言っても、大した事なかったね。姉さんも今頃、もう一人を倒しているはずさ」
「それはどうかな?保持者は、お前達とはレベルが違う」
勇騎が手札の中の一枚をつかむ。ただ、それだけの行為なのに、水科弟は自分が負けるようなビジョンが見えた。
「やってみろ!だが、シールド五枚を破って僕にとどめを刺すなんて無理だ!」
「俺ならばできる!やってみせる!」
勇騎は『フレミングジェット・ドラゴン』を召喚した。そして、スリリングスリーによってでてきたドラゴンは二枚。『フレミングジェット・ドラゴン』はこれによって三枚のシールドをブレイクできる。
「な……何でそんな……!」
驚いた水科弟だったが、すぐに表情を戻す。まだ、シールドトリガーがある。負けたわけではない。
「『フレミングジェット・ドラゴン』で攻撃」
三枚のシールドが消し飛ぶ。だが、そこにシールドトリガーはなかった。
(大丈夫だ。次にこの保持者は『ドルザーク』でシールドを攻撃してくる。計算上、この二枚のうちどちらかに地獄スクラッパーが入っているはず。地獄スクラッパーで『ポップ・ルピン』を破壊すれば僕は無傷。次のターンで二体のスピードアタッカーを出して保持者を倒す)
一瞬のうちにそれを計算した水科弟は勇騎を見る。勇騎は静かな声でクリーチャーを動かした。
「『ポップ・ルピン』の効果で『フレミングジェット・ドラゴン』を再起動させる」
「そんな馬鹿な!」
再びシールドを攻撃する『フレミングジェット・ドラゴン』。水科弟の計算どおり、『地獄スクラッパー』はシールドに入っていたが、そのカードでは『ドルザーク』を倒せない。
「やると言っただろ。日芽に手を出す奴は、どんな事があろうと倒す」
『ドルザーク』の斧が水科弟の頭上に静かに振り下ろされた。

「やっと終わったみたいだね」
デュエルを終えた勇騎が元の世界に戻ると、寛いだ様子の豪人が待っていた。隣には、解放された美和がいる。
「お兄ちゃんっ!勝ったんだね!?」
勇騎の隣にも、日芽が走ってきた。その後ろを博成が追う。
「日芽、これからはアイスをくれる人がいてもついていくなよ」
「うん……、もうアイスで釣られるのはこりごりだよ!」
「そうか……。よかったら、僕がその子にアイスをご馳走しようと思ったんだが……。その後、しばらく二人で色々な話をしたり、楽しい時を過ごす事がメインだけどね」
豪人が日芽を見ながら言う。それはデュエルしながら水科姉を口説いていた時と同じ口調だ。
「豪人様……?」
だが、美和に言われて豪人ははっとする。
「な、何を心配しているんだ、美和!僕が愛しているのは、美和だけだ!美和は僕の所有物だもんな!」
「まあ、豪人様……。こんな大勢の方の前で愛しているなんて……」
豪人が無理矢理話の方向を変え、美和は豪人の言葉に顔を赤く染める。
「何だかおかしな保持者だね。金城さんって」
豪人を見た感想を言う博成。ふと、勇騎を見ると、彼は少し険しい表情をしていた。
「勇騎君?」
「二階堂といったあの男……。東京連続失踪事件にも関係がありそうだな。どうやら、奴らはやっと俺達を本格的にマークしてきたようだ」
それはつまり、勇騎の戦いが今よりも危険なものになるという事だ。二階堂と一本杉は、今回戦った水科姉弟よりも上位のはず。それほどのレベルの人間が現れたら、どんな事になるのか。
「安心しろ、一ノ瀬」
博成の心を読み取ったのか、勇騎がゆっくりと言った。
「どんなに強い敵が現れても、真実が見えている限り、俺は負けない」
勇騎は常に自信を持って戦っている。だから、大丈夫だ、と博成は彼の姿を見ていつも安心するのだ。東京連続失踪事件も、博成が知らないこの事件の裏側も、勇騎が解決してくれる。

「かゆい、かゆいぜェ……!ゼロ号がまた誰かと戦ったみたいだなァ!」
一夜が包帯を巻いた胸部を右手でかきながら言う。巨大なビルの上に立つ彼の下に広がるのは、人間達が発する様々な光。その一つ一つを一夜は睨みつけていた。
「殺してェ……。俺がバラすまで誰にも殺されんじゃねェぞ、兄弟……!くくく、けーけっけっけ!」
闇夜に邪悪な笑いが吸い込まれていった。

第六話 終

第七話予告
委員長に東京連続失踪委員会に関するレポートの提出を迫られる博成。より詳細な事実を調べる為に勇騎と行動を共にするが、そこで彼が見たのは包帯の少年、墨川一夜だった。
「お前から姿を見せるとはな……。あの時の事、忘れたとは言わせない!」
勇騎とつながりがある一夜。そして、二階堂も保持者を倒すために暗躍を始める。
第七話 悪意

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